beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 2話【長編】

今までのお話し

HERO 1話



HERO 2話


俺は誰かもわからないその顔を見つめながら、しばらく立ち尽くした。

見た事もない顔。
見た感じまだ二十歳くらいだろうか。

髪は金髪で目は切れ長、端正な顔立ち。
確実にモテる部類の顔だろう。

触ったりつねったりもしてみた。

夢かどうか確かめる為に頬をつねるなんて表現を見るたびに、実際にそんな事するかいと思っていたが、本当にそういう場面に出くわすとやってみるもんなんだな・・・とかくだらない事を考えている自分も滑稽に思えた。

信じられないが、これが自分であることには間違いなさそうだ。

いくぶん冷静になった俺は、いろいろと考えてみた。

やっぱり事故にあってぐちゃぐちゃになった顔を直す為に整形手術を受けたとか・・・。

小説かなんかのように、誰かと魂が入れ替わったとか・・・。

だめだな。

現実味がない。

魂が入れ替わるとかまずある訳ねーし、手術を受けたとかっていきなりこんな完璧に治った姿で気がつくわけねーだろう。
しかも、明らかに体つきも違う。

いっくら考えてもわかるわけねーな。
全く意味わかんねーけど、とりあえず誰かに聞いてみるしかなさそうだ。

まず家に帰ることにした。

とりあえずその辺に脱いであった服を着て、部屋を出た。
鍵はテーブルの上に投げ捨ててあったのですぐにわかった。

誰の部屋かわからないけど、鍵もかけずに出て行く訳にはいかないからな。

部屋を出たら、長い廊下の先にエレベーターが見えたので呼ぶ。
驚くことにここは20階らしい。
そんなところに住む人間にやはり知り合いなどいない。

エレベーターで1階に下り、大層なエントランスを過ぎて出口に向かう。
途中、ここの関係者らしいスーツの紳士に頭を下げられる。

俺を住人と思っているようだ。

外に出て、適当に歩いてみたら、大体どこなのかわかった。
そりゃーなんかやたら品のいい人種しかいないわけだ。

なんとか駅に向かい、電車に乗ろうとするも、ここで気づいた。

・・・金ねーじゃんか。

借り物の服を着て何も持ってきてない。
うかつだった。

小銭でもないかと、ポケットをまさぐったら、ラッキーなことに財布が入ったままだった。

迷ったが、これも後で返します。すみません。
と、心で念じつつ開けてみた。

・・・いくらあんだこれよ。

中にはカード数枚と万札がぎっしり。
数えてみたら30枚。

服とかもそうだけど、とんでもねぇ金持ちの誰かなんだな・・・ますます何でそんな人の部屋にいたのかわからん。

が、考えてもわかりそうもないので、とりあえず切符を買い電車に乗った。

途中で一回乗り換え、乗り馴れた路線に落ち着き、やはり俺は俺だと確信した。
飽きるほど乗ったこの電車。

間違いない。

久美子は今日いるのだろうか。

でも・・・今のこの俺の姿を見て俺とわかるだろうか。
それとも、何か事情を知っているのだろうか。

とりあえず会って反応を見てみるしかないな。

こんなありえない状況になると、逆に冷静になるのかもしれない。

俺は電車に揺られながらドアにもたれかかり、見慣れた風景を眺めつつ、今夜は彼女の生姜焼きが食べたいなぁと思っていた。




****************************************




見慣れた駅に着き、見慣れた道を通り、いつものように部屋に帰る・・・ハズだった。

道も間違っていない。

でも・・・いつものルートを通って帰ってきたソコは・・・駐車場になっていた。

うそだろ?

だって俺の記憶の昨日は普通にここで暮らしていたじゃないか。

少しパニックになった俺は、すぐ近くのコンビニに入り、店員に「あそこにアパートありましたよね!」と詰め寄った。

若い店員は「いやぁ・・・知らないっすねー」と言った。

俺はその隣の家、その隣、かたっぱしからドアを叩き、訪ねた。

しかし帰ってきた言葉はすべて同じだった。

うそだろ?

だって、俺が住んでたときにアンタとか見た事あるぞ?
あそこにアパートがあったって事くらいは知ってるだろうがよ!


路肩に座り込み、水を一気に飲み、息を整えた。
少し落ち着いてきた。

整理すると、3年くらい前に古くなったから1回新しくはしたらしいが、あそこは昔から駐車場だったという事だ。

そんなバカな話があるか。

俺のこの記憶は、生々しい日常はなんなんだ。

それじゃぁ、久美子は、久美子はどこへ?

それすら幻だったっていうのか。



・・・いや・・・まだある。

心当たりはまだあるだろ。

落ち着くのは心当たりをあたってからだ。




****************************************




俺は、くたびれた雑居ビルの前にいた。

散々通ったこのきったないビル。
5階建てで、3階に小さい印刷屋がある。

そんな大した思い出もないけど、それなりに一生懸命働いていた会社。

ビルの入り口の案内をみたら・・・その名前はなくなっていた。

ここもか。

うそだろ?

やっすい給料で大した仕事もしてないけど、人だけは良かった。
それなりにいろいろな思い出もある。

ビルの前で清掃をしているおじさんがいた。

そうだ!アレはここのビルのオーナーじゃないか。
あぁやってたまに掃除しにくるんだよな。

彼なら絶対に覚えてる。
何回も雑談したし、知らない仲じゃない。

俺は期待をこめて声をかけた。
ただし、今の自分が違う姿になっているのもわかっている。

「すいません。ここのビルのオーナーさんですよね?」

ゆっくりと振り返り、笑顔でオーナーは答えた。
「そうですけども、どちらさま?」

「いや、あの、お尋ねしたいんですけど、このビルの3階にS社ってありましたよね?」

しばし怪訝そうな顔でじっと顔を見つめた後、オーナーは言った。

「いえ。ここの3階は昔から空いていますで、ウチの倉庫に使ってるんですが?」



・・・俺は肩を落とした。

やはりだ。

ここもそうなのだ。


何かを訴えたいような顔で俺の顔を覗き込むオーナーにお礼を言い、俺はそこを後にした。


どうすればいい。

いきなり姿形は変わっている、住んでた所はない、働いてた会社も存在しない、今までの自分の生きてきた痕跡がまるでなくなっているではないか。

全く意味がわからない。

誰か。

誰か何か教えてくれ。



目を閉じて考えた。


うん。


やっぱり・・・・・それしかないか。


とりあえずは、あの部屋に戻る。


あそこに居れば、きっと誰か来るだろう。
そして、その人からなんらかの事情が聞けるかもしれない。

もう、他にすがれるものはない。


俺は、あの部屋に戻る事にした。



なんだろう。

ただ、知らないからっていうだけじゃない。

少し居ただけだけど、なんだか俺はあの部屋が気に入らなかった。

見た感じなんでもそろっている。

でも、何かが足りないんだ。


帰りの電車に揺られながら俺は気づいた。


そうだ。

あの部屋は一見何でも揃っていそうだけど、どれもこれも「ただ、ある」って感じなんだ。

あそこには、人間くささがない。


つづく
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/09/11(土) 14:59:33|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<簀の子の下の舞 | ホーム | HERO 1話【長編】>>

コメント

1話2話一気に読んでしまいましたよ!!

面白い!!

続き楽しみにします・・・  待ち遠しいです・・・
  1. 2010/09/11(土) 23:35:30 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

→一恵さん

日記のあいまに気まぐれで適当に更新します。
まー本格的なものなんてとても書けないし、お遊びみたいなもんなんで・・・気長にお待ち下さいな(笑)
  1. 2010/09/15(水) 08:24:57 |
  2. URL |
  3. 平 #-
  4. [ 編集 ]

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