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HERO 6話【長編】

今までのお話し

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HERO 6話


今、俺の前に気難しそうな紳士が立っている。
ガッチガチのオールバックでスーツ姿の彼は、厳しさを感じさせる目つきでじっとこちらを見つめている。

「で、これからどうするつもりなんだ?」

そう。この男が白鳥仁の父親にして白鳥グループの総帥。
想像はしていたけれど、想像以上に近寄りがたく、氷のようなオーラを発している。

「はい。とりあえずは今まで通りに生活してみようかと思っています。」
仁が家でどのように家族に接していたか、言葉使いなど、全て真由美に事前に聞いている。
親に敬語なんて、テレビだけの世界だと思っていたけど。

「わかった・・・おまえは私の後を継がなくてはならないのだ。今はしっかりと勉強をしなさい・・・時間だ。私はもう行く。」

そう言って彼は部屋を出て行った。

10分。

息子が記憶がおかしくなったと会いにきて、一緒に居たその時間はたったの10分だ。

今までの経緯や、今の俺の状況なども全て話した。

その返答がただ一言「まぁ体に異変がないなら、とりあえず問題なかろう」・・・だ。

帰り際、初老のおばさんが話しかけてきた。
彼女は昔からこの家にお手伝いとして来ている【よしこ】さんというらしい。

「だんなさまはいつもあんなだけれど、坊ちゃんのことは心配なされていますよ。」
とても暖かい眼差しでこちらを見つめている。

「私は生まれた頃から坊ちゃんのお世話をしているので、わかります。今の坊ちゃんはなんだかまるっきり違う人のようです。」

「ありがとうよしこさん。中身や記憶がどうであれ、俺は仁だよ。とりあえずいろいろと頑張ってみるから。」

この心から心配してくれている人の事を、今の俺は知らない。
それが申し訳なかった。

「どうかもう少しお顔を見せにきて下さいね。坊ちゃんになにかあったら・・・わたしは・・・」

言いながら泣きそうになっているよしこさんの肩に手をおき、俺は言った。

「そうだね。たまに顔を見せるようにするよ。」

「なんだか理由はわからないけれど、私は不安です。真由美さんもまたいらっしゃってね。」

ニコリと微笑んで真由美も言った。
「私がまた仁くんを引っ張ってきますわ。よしこさんもあまり無理なさらずにね・・・。」

門を出た俺たちを見送りながら、よしこさんはずっと見えなくなるまで手を振っていた。


「ふぅー」

俺は思いっきり伸びをした。

「どうだった?初めての【自分の家】は」
クスクス笑いながら真由美がこちらを見る。

「なんとなく予想はしていたけど、それ以上だなぁ。息子の記憶がないとか結構おおごとだと思うんだけど、大事な会議だとかで10分でサヨナラだろ?あり得るか?」

「そうね・・・。ウチの親もせわしないけど、白鳥家ほどではないわ。確かに異常といってもいいくらい、親子の関わりはなかったみたいね。」

「一流企業のトップってのは、ああいう風じゃないとやっていけないもんなのかなぁ。このまま白鳥仁として生きて行くにしても、悪いけど・・・俺はあんな生き方はできない。」

「そうかもね。スケジュールも分刻み秒刻みだって聞いたわ。そして・・・昔お酒に酔って帰ってきた仁くんも、同じ事を言っていた。俺はあんな風にはならないって。」

「仁が人に迷惑をかけて荒れていた事を肯定する気はないけど、少しわかる気もするよ。きっと、幼い頃からそうして育ってきた彼には、逃げ道も何もなかったんだろうな。」

公園に差し掛かったとき、真由美が言った。
「お天気もいいし、少し休んでいきましょうよ」

「・・・そうだな」
季節は初夏。
じりじりと刺す日差しが、夏の到来を予感させる。

適当なベンチに腰を落ち着けて、目の前で楽しそうに走り回る子供たちを眺めた。


子供たちを優しい目で見つめながら、真由美が言う。
「とりあえずこれで【白鳥仁】の紹介は一通り終わり。病院での検査も終わり。結局釈然としない結果かもしれないけど、とりあえずこれからどうする?」


どうする・・・か。


「とりあえず、もうやれる事はない。純という人物は見つからなかった、記憶の中で住んでた家もない、一緒に住んでた彼女の行方もわからない・・・どうしようもないな。しばらくは仁として過ごしてみるよ。記憶が戻るのかもしれないし。」
俺は空を見ていた。

記憶が違おうと、空はいつもと同じ。
時間は変わらずに過ぎて行くなぁ。

俺という人間がどうなろうと、世の中には何の影響もない。

俺ってなんなんだろうなぁ・・・。


「仁くん?」

「あ・・・あぁ。とりあえず・・・今日は飲みにでも行くか?」

真由美は立ち上がり、俺の背中をバーンと叩いた。
「いいわね。オレ・・・金持ってるみたいだから・・でしょ?」

顔を見合わせて笑って、俺たちは歩き出した。

****************************************

俺たちは夜の街を歩いていた。

少し飲み過ぎたけど、夜風が気持ちいい。

「ねぇ仁くん、さっきは白鳥仁として生きて行くって言ったけど、じゃあ私は白鳥仁の許嫁としてこのまま居てもいいってこと?」

フラフラした足どりで歩きながら振り返って真由美は言った。
たったの2杯でこれだと、あまり酒には強くないようだ・・・というか、俺も彼女も未成年なんだなぁそういえば。

記憶の中で30歳を超えていた俺には、あまりにも【未成年】という言葉が懐かしすぎてしっくり来ないな。


「そうだな・・・それはもちろん・・・」


と俺が言いかけたところで、後ろから悲鳴が聞こえた。

しだいに悲鳴は近くなってくる。

その方向をみると、刃物を持った男が走ってくるのが見えた。

周囲には顔や腕を押さえた人がうずくまっている・・・!

そしてものすごい早さで真っすぐにこちらに向かってきて、真由美にその刃を向けた。


ズブ・・・


気がつくと俺は真由美の前に腕を突き出していた。

肉に刃物が食い込む感覚がはっきりと認識できた。

「キャァァァー」

真由美の声が聞こえる。

両手に刃物を持っていた男は、すかさず逆手の刃物を突き出してきた。

不思議な事に、やけに俺は落ち着いていた。

男の動作がやけにゆっくり見える。

デカい・・・サバイバルナイフだろうか。

男の目が充血している。
興奮状態なのか、まともな目つきでない事は確かだ。

一直線に進んでくる。

刃物。

おそらく一瞬の出来事なのに、なぜこんなにスローに見えるのだろう。

標準は脳天・・・完全に殺す気だな。

俺は顔をそらしてそれをよけて、男の腹に思い切り蹴りを入れた。

次の瞬間、男は数メートルは吹っ飛んで後ろの商店に突っ込んで行った。



もちろん、人の蹴りでそんなに人が吹っ飛ぶワケはないのだ。
男は建物の壁を破壊して中にめり込んでいた。


「なに?なに?何かが飛んできたの?何が起こったの?」

どうやら真由美には蹴りは見えていないらしく、何かにはじき飛ばされたと思ったようだ。

俺の腕には深々と刃物が刺さって、反対側まで突き抜けたままぶら下がっている。

とりあえず安心したのか、だんだんと俺の意識は遠のいて行った。

俺を抱きかかえる真由美の温もりと、流れて行く血が暖かかった。



つづく
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/21(日) 06:13:10|
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