beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 7話【長編】

今までのお話し

HERO 1話

HERO 2話

HERO 3話

HERO 4話

HERO 5話

HERO 6話


HERO 7話


目が覚めた。

体を起こすと、とてもいいニオイがする。

「やっと起きたね。昨日は相当疲れてたみたいねー。テレビ観ながらすぐに寝ちゃってたよ。」

せわしなく台所から朝食の器を運びながら、久美子は言った。

そう。
いつもの笑顔、いつもの風景、いつものみそ汁のニオイ。

「そうか?ごめんごめん、一緒に映画観る予定だったのになぁ。」
オレは布団から出て、こたつに入る。

すっかり並び終えてオレの向かいに腰をおろした彼女は、変わらぬ笑顔をオレに向ける。
「仕事でつかれてたんだもんね。返却期限は明日だから、今日観ようね。さ、食べよ。朝しっかり食べないと1日頑張れないよ!」

「うん・・・。」

1人で居たときは、ぎりぎりまで寝ていたくて朝飯は食わなかったが、今は彼女がそれを許してくれない。
朝しっかり食べて、よしこれから1日頑張るぞと家を出て行くのがいいんだと半ば強引に強制されて、すっかり今は慣れてしまった。

みそ汁をすする。
いつもの味。

いつもの味をいつも通りに味わった・・・ハズなのに、気付くとなぜか涙が頬を伝っていた。

「どうしたの?なにか変な夢でもみた?」
ビックリしたようにオレの顔を覗き込む久美子。

なんだろう。

なんでだ。

久美子・・・。



オレは目を開けた。

真っ白な天井。

光が・・・まぶしい。

「おぉ、気付きましたか!?」

目の前で白衣の男がオレの目を見ている。
こいつは・・・水科・・・そう・・・水科だ。

「仁くん!」

横に目をやると、真由美が泣きながらオレの手をにぎっている。
きっとずっと長い間にぎっていたのだろう・・・とても暖かく、少し手汗もかいているようだ。

オレはゆっくりと上体を起こしてみた。

夢・・・。

なんて残酷な夢をみちまったんだ・・・また思い出してしまった。
夢の中の久美子の最後の言葉を思い出して、自虐的に笑った。

悪い夢・・・か。


「大丈夫ですか?もう少し横になっていた方が・・・。」
水科が言った。

オレは起き上がってベッドに腰をおろした。
「大丈夫です。少し、懐かしい夢を見ていただけ。そういえば・・・俺たちは誰かに襲われて・・・。」

「大変でしたね。その事で、あなたに重要な話しがあるんです。できれば真由美さんは外されて2人の方がよいのですが・・・。」
こちらの顔色をうかがうように水科は言った。

重大な事・・・?ケガの事じゃないのか・・・それとも・・・。

ある予感が頭をよぎり、「少しだけ外していてくれないか?」と真由美に言った。

「・・・わかったわ。でも、後でちゃんと話してね。それよりも、体はもう本当に大丈夫なのね?私をかばってあんな・・・あんな事に・・・。」

今にも泣きそうな真由美の頭に手を置き、オレは優しく言った。

「体は大丈夫だよ。なんか腕は包帯グルグル巻きだけどちゃんと動くし、後できちんと話すから、少し外で待っていてくれないか?」

「うん・・・。わかった。つらかったら無理しないでね。終わったら電話して。」

真由美は何度か振り返りながら、無機質で真っ白な部屋を出て行った。

「・・・さてと。実はいくつか謝らなければいけないことがあります。」
正面に座って真っすぐにこちらを見据えながら、水科は言った。

ベッドから下りてテーブルについたオレは、予感していたことをまず単刀直入に口に出してみた。
「えぇ。教えてもらえますか?何をオレに隠していたのかを。」

かすかに微笑み、水科は話し始めた。

「例のあの大事故のあと、何事もなく無事に手術が終了したのは確かなのですが、実はその手術は単純にあなたの命を助けるだけのものではなかった。簡単に言うと、あなたの体には今特殊なある【細胞】が組み込まれているのです。」

「ある細胞・・・?」

「それは、人間の細胞を限界まで活性化し、特殊な能力をもたらす人口細胞。まずは、その突き抜けるまで刺されたはずの腕の包帯をとってみて下さい。」

オレは腕の包帯をとってみて・・・驚いた。

そこには、傷1つないのだ。

あれだけの裂傷を負っていたのに、痛みすら微塵もなくなっている。

「これは・・・!?」
オレはきっと間抜けな顔をしていたのに違いない。

水科は話しを続けた。

「そう。まず第一に、体組織の修復がとんでもないスピードで行われます。ちょっとした傷程度では、ものの数秒で塞がってしまいます。他には、動体視力もとんでもなく増幅されます。きっと集中したあなたには、相手の動きなどとてもゆっくりとはっきり見えたのでしょう。」

「・・・確かに・・・そんな感じだった。じゃあ、蹴りを入れたときのあのとんでもない破壊力もってことか・・・?」

「そうです。力もとんでもなく倍増されているハズです。今のあなたはその気になればとんでもない早さで走る事ができ、とんでもない高さでジャンプすることができます。」

全く現実離れした話しで、どこか人ごとのようにオレは聞いていた。
映画やマンガじゃないんだから、信じろってのが無理だ・・・が、すでにここ最近の一連の事で麻痺しているのか、疑う気にはなれなかった。

しかし・・・。

「しかし・・・なんでオレがそんな事に・・・?」
手に汗が湧き出てくる。

「細かく話すと長くなるのですが、このナノ技術の研究は、何年も前から行われていました。私ともう1人の研究者によって。そして、ようやくその技術が完成に近づいていたとき、私は恐ろしい事実を知りました。研究施設の黒幕であるその企業は、この技術を軍用として使用しようとしていたのです。傷を負ってもすぐになおり、人間以上の力を持つ兵士・・・こんなものが大量に導入されたら・・・。そう考えてみれば至極当然のことなのかもしれませんが、当時の私は研究に没頭するのみで気付いていませんでした。」

拳を握りしめて震えながら、水科は続けた。

「それに気付いたとき、恐ろしくて私は研究を破棄しようと考えました。この身に引き換えても・・・。その事を、もう1人の研究者に話したら、彼は【知ってたよ】と笑いながら言いました。まずいと思ったときはもう遅く、私は屈強な男に取り押さえられ、監禁されてしまいました。」

まるで映画みたいな話し・・・しかし、水科の目は真剣そのものだ。
水を一気に飲み干して一息ついた水科は、さらに続けた。

「その1年後、とある機関によって私は救出されました。そして、研究を続け完成させたのです。」

そこで疑問に思ったオレは口を挟んだ。
「なんでだよ。そんなにまずいものなら、そのまま未完成の方がいいんじゃ・・・」

1回天井を見つめてから、静かに水科は口を開いた。
「そうはいかなかったんです。行方をくらましたもう1人の研究者が・・・すでに完成させてしまっていたのです。私は・・・それを止めなければならない・・・。」

「でも、その企業ってやつがわかってるのなら、そこを押さえればいいんじゃ・・・。」

「無理です。すでにその男は完成前に企業からも行方をくらませ、どこかに潜って完成させたようです。その企業も今は彼を追っています。彼は独自にそれを使って何かをやらかすつもりなのでしょう。元々優秀な男でしたが、彼は・・・狂っています。一気に話してしまいましたが、すみません。」

オレにはなんとも言葉が浮かばない・・・全く現実離れしすぎてる。
組織とか・・・ナノとか・・・なんだか。

「でも、対抗して完成させたのはわかったけど、なんでオレなんだ?」

「それは・・・あなたに細胞が移植される事は実はすでに決まっていたのです、仁くん。ただ・・・あの日に事故があったのは全くの偶然なのです。あと数ヶ月で決行というときに、あなたは事故で虫の息・・・私たちは非常に焦りました。そして全力をもって生命を維持すると同時に細胞を移植したのです。しかし、それからなかなか細胞が馴染まないのか、一向にその力は表に出てきませんでしたが、こないだの通り魔事件の際に、危険が身に降り掛かることが引き金となって出てきたようですね。」

オレは叫んだ。

「決まっていたって勝手に言ったって、本人の意思なしにそんなこと・・・!しかも白鳥グループの跡取りだぞ。問題にならない訳がない!」

水科は穏やかに言った。

「・・・本人が望んだことなのです。そして、この計画のバックアップは他ならぬ白鳥グループです。監禁されていた私を救い出したのも、完成までの援助も全て。」


・・・・・!

そんな・・・。


「仁くんは、他の何者かになりたがっていたのです。そしてお父上の白鳥さまも了承なさっています。あの方の本意はわかりませんが・・・。」

オレは一番聞きたかった事を問いかけた。

「そのときに、田中純・・・つまりオレが何らかの方法によって白鳥仁の人格になったんじゃないのか?」

水科はすこし狼狽したように見えた。

「それは・・・初めに申し上げた通り、田中純なる人物は存在しません。ただ、強烈な細胞の作用により仁くんの願望が具現化されてしまった可能性は・・・あります。私も、いきなり人格が変わるという結果には驚いております。申し訳ない・・・。」


申し訳ないったって・・・。


「実のところ、2人で共同研究していた頃は、もっと恐ろしい結果になるハズでした。移植された細胞が活性化した後は、もとの人格は完全に破壊され、主の言うがままに命令を聞くマシーンのようになってしまうのです。私はそれが恐ろしくて、1人で独自に人格をそのまま残す研究をしておりました。おそらく向こうが完成させた人間は、忠実に命令を聞く、大変危険な存在になっているはずです。殺人でも破壊でも、言われれば躊躇なく行うでしょう。」

「でもオレの記憶はおかしな事になっているじゃないか!そこまでの技術があったのなら、何かしたんじゃないのか!」
オレは机を叩きながら叫んだ。

「それは・・・不可能です。大体メリットは何もない。事情を全て知っている仁くんの人格をそのまま残した方が都合がよいでしょう。」

・・・・確かに・・・。

「まぁ・・・いい。でも、それでオレをこんなスーパーマンみたいにしちまって、アンタたちは何をさせようっていうんだよ。」

いきなり水科は椅子から降りて土下座をした。
「お願いします!力を貸してください。本当にこのままじゃぁ、世の中は・・・おかしくなってしまう!」

いきなり地面に頭をこすりつけた水科に驚いたオレは、怒りも失せてしまった。
「だから、何を望んでいるのか話して下さいよ。」

「これからきっともう1人の研究者が完成させた人間は、何かしらの行動に出てくるでしょう。なにしろ、もうその研究者は半分狂っています。それは破壊か殺戮か、もっと大きな事を考えているかもしれない。やがてその波はどす黒い大きな波となって、表で気付いたときにはきっと多数の犠牲が出ているはずです。なんとか、それを止めていただきたい!」

もう壮大すぎて、オレは何がなんだかわからない。
「どうやってそいつを探すんだ。」

「それは、こちらで全力で情報を探ります。きっと行動に出てくる。あなたには、そのもう1人の人間を亡き者にして欲しい。」

「亡き者って・・・人殺しをしろってのか。そんな簡単に・・・。」

「アレはもう人格もない。ヒトではないのです。もとの人間が誰かはわからない、可哀想ですが、もうもとに戻す事はできない。完全に消去し、研究者も捕縛し、書類含め一切を無に帰す。それで完了です。この研究は初めからなかった事にしなければならない。」

オレは苦笑した。
「ヒトではない・・・か。オレもそうなんだろうな。世界でたった1人しかいないその同胞を殺すのか・・・。」

水科は頭を上げて叫んだ。
「同じではない・・・!あなたにはしっかりと人格があるじゃないか!仁でも純でもいい。あなたは自分で考え、人を好きになり、人を助けることもできる。向こうは生きていても死んでいるのと同じ・・・ならばせめて安らかに死する事がせめてもの救いです・・・。」

オレはふーっと大きなため息をつき、天を見上げた。

自分が違う人間になったなんて騒いでるウチはまだかわいかったなぁ・・・なんだよこのファンタジーな展開は・・・。

どうしろってんだよ。

「わかったよ・・・。とにかく何かあったら情報をくれ。どうするかどうかはそんときに決める。オレには人殺しなんてできないと思うしさ・・・。」

ガバッと飛び起きた水科は、オレの手を力強くとった。
「ありがとう・・・。我々も完全にバックアップはする。」

「犠牲がとかなんとか・・・それで何もしなかったらなんか悪者みたいじゃないか。ただ言っておくけど、オレは普通に生きてきて普通に働いて普通に暮らしてた人間だぞ。そんなヒーローみたいな真似事ができるかどうかわからないよ。怖いしさ。」

「その辺もできる限りのバックアップをします。あと、これから特別な力をもつあなたは、例えば道行く人を助けたり、無頼な輩を退治するのも容易になってくる。ここまで触れ合った今の性格からして、なんだかんだと言って、あなたは人を助けるだろう。」

オレは髪をかき上げて言った。
「オレはそんな善人でもないし、ただの恐がりだぞ。」

「まぁ、とりあえず聞いて下さい。あなたは完全無欠ではない。まずは、相手の攻撃をはじき返すわけじゃない。しっかりと痛みもすれば、損傷もする。ただ治りが極端に早いだけだ。従って、とんでもない損傷を受けた場合は修復にも時間がかかる。そのときに攻撃されたら死ぬ事もありうる。または耐えきれない激痛に精神が先に参ってしまう事もありうる。後は、力の加減を練習してほしい。あなたの全力は簡単に人を殺してしまう。そして最後に、なるべく人に特殊な力は見せない事。フォローしきれない事態になる可能性もある・・・とりあえずはこれを胸に刻んでおいて下さい。」


・・・もう忘れかけてるよ。


「わかった。肝に銘じておくよ。ただ、オレは普通に暮らしたいだけだ。人助けなんてするつもりはないよ。ようはもう1人の片割れを見つけ出してなんとかすれば終わりなんだろう。」

「それで結構です。ただ・・・忘れないでほしい。その相手もあなたと同じ能力を持っているという事を・・・。しかも、相手は殺す事に躊躇なんてないのです。優しいあなたがどこまでできるか心配ではありますが・・・もう仁くんに頼るしかないのです。」

「とりあえずまた連絡を下さいよ。オレは少しこの体にいろいろ慣れてみるから・・・。」
オレは立ち去ろうと上着を羽織り、出口へ歩き出した。


立ち去るオレの背中に、後ろから水科が声を張り上げて言った。

「この細胞研究の通称は【GOD】です。どこからかこの名前を耳にしたら要注意して下さい!・・・私はそれに改良を重ねて完成した結果に違う名をつけました。【HERO】です。」


・・・HEROね。

ヒーローに神を倒せってか・・・因果なもんだな。
漫画じゃねーんだからよ。

印刷屋で少ない給料もらって地道に生活していたヒーローなんて絵にならねぇだろう。


だってヒーローの好物が鶏のからあげだだぜ?



つづく
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/22(月) 02:25:49|
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