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ただひたすらに戯言を

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HERO 10話【長編】

今までのお話し

HERO 1話

HERO 2話

HERO 3話

HERO 4話

HERO 5話

HERO 6話

HERO 7話

HERO 8話

HERO 9話



HERO 10話

ソイツの走る速度は、桁外れに早かった。
風を切る音が凄まじい。

それでも火事場のクソ力というべきか、ソイツが母親に手をかけようとした瞬間、飛びついてタックルをした。

2人で地面に滑り込む。
ギリギリ間に合った。

そのまま馬乗りになって全力でパンチを叩き込む。

ただただ無心で、何発も顔面に叩き込んだ。

血まみれの両手を見て我に返り、そいつの顔をみた。



笑っていた。


歯がへし折れて鼻が曲がった顔で、笑っていた。


下から突き飛ばされ、後ろへひっくり返ると、その間にソイツは立ち上がった。

「おーなるほどなるほど。こんな感じかぁ」

オレは、その笑顔に底知れぬ恐怖を覚えた。

「今のはちょっと自分と同じくらいの力で攻撃されるって事を経験してみたかったんだよね。うん。」

笑顔で見つめるその目は、血で充血している。

「ふー・・・。じゃ、そろそろ殺すね。あの親子。」



・・・!


母親は、急に襲われたショックで腰をぬかしたのか座り込んで震えていた。
子供は脇にしがみついて泣いている。

ここは人通りが少ない路地。
他に誰も通る気配はない。



ゆっくりとそこに向かうソイツ。



オレは走ってソイツの肩をつかんだ。

瞬間。

掴んだハズの右手が無かった。

激痛。

目を落とすと地面に自分の手が転がっている。

「このくらい簡単にできるでしょ?」

ソイツは血まみれの手をオレの前に見せた。

「あのさぁ・・・君の力はもうわかったからいいや。君・・・弱いから」

クルッと向き直ると、親子の前にソイツは立った。

もう恐怖も痛みもなかった。

「やめろー!」

叫びながら、オレはソイツの背中に蹴りを放った。

後ろを見向きもせずにソイツはその足を掴んだ。

激痛が走る。


ゴキィ


鈍い音がハッキリと聞こえた。

そのまま投げられて地面に這いつくばる。

立ち上がろうとしたら、足が動かなかった。
見てみると、あきらかに不自然な方向に曲がっていた。

「あれ?痛いの?ふーん・・・痛みなんていう余計なものを残されてんだねー。オレは痛みとかいうものが無いからわかんないけどねー。いやーうらやましいよ。いいなー痛がったりできて・・・ふふふ」

しゃべりながら、ソイツはゆっくりと親子の前に立ち、手を振り上げた。


母親はしっかりと子を抱き、顔を埋めている。


「悪いねー」

そう呟いて、ソイツは笑顔のままその手を振り下ろした。


次の瞬間。


その手は止まった。

ソイツの胸から、手刀が突き出ていた。

おびただしい血の雨が、目の前の親子に頭から降り注いだ。


無我夢中だった。

オレの手刀は背中から深々とソイツに突き刺さり、胸まで抜けていた。


振り返ったソイツに笑顔はなかった。

「やればできんじゃん・・・今のはスピードも威力も申し分なかったねぇ。」

間に合った・・・のか。

もう立つ事すらできない。


でも・・・なんとか・・・。




と、思ったその時。




ソイツは満面の笑みを浮かべた。



「でも手遅れだねー」



ソイツの手は振り下ろされた。


・・・え?


目の前の光景が一瞬、ウソのように思えた。


ソイツの手は、深々と母親の胸に突き刺さっていた。


「ふふふ。残念だったねぇー。今の顔良かったねぇーククク。」


オレは、動けなかった。

頭がしびれる。


「まぁでも、コッチも心臓ちょいとやられてっからね。今日は引き下がるよ。子供の方は、最後の君の攻撃のご褒美って事でそのままにしてあげる・・・まぁ・・・母親いなくなっちゃったけどねーーー!ははは」

「ふざ・・・けるな・・・!オレを殺せばいいだろうが!」

「つれない事言うなって。オレらは兄弟みたいなもんなんだよ?君が兄さんって事かな。オレと君は同じ・・・特別な存在なんだよ・・・ふふふ。それに君はまだ殺しちゃいけないらしいんだよね。よくわかんないけど・・・まぁ別に殺すの簡単だしね。」

気がつくと黒塗りの車が脇に停まっていた。

ドアを開けながら、ソイツはオレを見て、微笑んだ。

「君、素材は悪くないみたいだけど、弱いよね。何してたの今まで。まぁ、あのお母さん死んだのは、君のせいだから・・・クックック。いやぁ弱いね・・・HEROクン。ダメだよーちゃんと護ってあげなくちゃーさー・・・はっはっは。そんじゃね。」

走り去って行く車をみつめながら、オレは這って親子のところへ行った。

母親の脈は・・・もう無い。

通りがかった中年サラリーマンが騒ぎ出した。

何かわめいているが、耳に入ってこない。


音量を0にした映画をスローモーションで観てるみたいだ。


オレは泣きじゃくる子の頭を必死に撫でていた。

大丈夫だから・・・大丈夫だから・・・。


何が大丈夫なものか・・・。

映画や漫画なら、ここはとんでもない力に目覚めたりして助けているだろう。

でも・・・現実は・・・何も助けられていない。

好き放題やられ、目の前で命を奪われ、悠々と去られただけ。

そんなHEROなんているかよ・・・。

危機一髪間に合うのがHEROじゃねーのかよ・・・。


爽快に悪者をやっつけるHERO・・・そんなものありゃしねぇ。

肉を割くグロテスクな感触、骨が折れる音、飛び散る生暖かい血、激痛、憎しみ、悲しみ、これが現実。


オレはHEROになんかなれねぇよ・・・助けてよ・・・怖ぇ・・・怖ぇよ・・・もうヤダよ。


涙が止めどなくあふれた。

いつの間にか泣き止んでいた女の子が、オレの頬をさわりながら「だいじょうぶ?」と言った。


オレはその子の頭を撫でながら、座り込んだまま、ただただ泣いた。


つづく

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/01/05(水) 06:32:26|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<直往邁進 | ホーム | HERO 9話【長編】>>

コメント

壮絶な人生になってますね・・・
毎回毎回ドキドキしながら読んでます。

続き楽しみにしています。



寒さの厳しい日々が続いていますから、どうぞお体大切に!! 
                         では
  1. 2011/01/20(木) 12:43:52 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

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