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HERO 11話【長編】

今までのお話し

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HERO 11話

白い壁。
無機質な光。

目の前には水科がいる。

右側には真由美。

オレは、研究所の部屋にいた。

水科が水を一気に飲み干すと口を開いた。

「・・・よくぞ決意してくれました。」

少し涙ぐんだような目でこちらを見ている。

あの【GOD】との初対面から3日・・・ずっとオレは考えていた。

自分のふがいなさ、これからの事。

結局オレはあの親子を守れなかった。

今でも目に焼き付いて離れない・・・母親が死んでいく事すら理解できずに戸惑う、あの時の子供の顔。

「仁くん・・・何度も言うようですが、あの時点でアナタがヤツを止める事は不可能でした。話しを聞いた限りでは、どうやら向こうは順調に力を引き出すのに成功しているようです。それでも子供の方はアナタのおかげで助かったのです。あまり気に病むのはお止めなさい」

水科の声で我に返った。

あれからあのシーンが頭をずっと回っていて、夢にまで出てくる。
決まって最後の場面で目を覚まし、あれは現実なんだと思い知らされる。

「オレが助けたわけじゃない・・・あれは単なるヤツの気まぐれにすぎない。オレは何もできなかったんだ!」

そんな事をしてもみっともないだけだと思いつつも、つい声が荒くなってしまう。

真由美は、何も言わずにそっとオレの手を握っている。

「そうですね。今のアナタは身体能力が優れているだけのただの人です。でも、アナタの行動があの子を助ける結果になったのも事実。いつまでも後ろを向くのはやめましょう。その為にアナタは決断して今ここにいるのでしょう。」

水科がこちらをまっすぐ見据えて、諭すように言ってきた。

そう。

オレの出した結論は、現実を受け入れる事だった。

いきなりの非現実的な毎日。

失われた日常。

消えたささやかな未来。

その全てを受け入れていくには、オレは小さすぎた。

突然目覚めたら昨日までのささやかな幸せが失われ、別人になり、とんでもない力をもった存在と闘えという。

何も考えられなかった。

それでも、腹はへり、眠くもなる。

メシは食えるし、テレビも見れる。

そんなただの日常に逃げていた。

でも、目の前でとうとう人が死んだ。

オレがそうやって逃げている間に、敵は成長していた。

ヤツは確かに言った。

「今までなにやってたの?」と。

全くその通りだ。

そのせいで、オレは何もできなかったんだ。

人を傷つけるのが怖いなんて言っているうちに、目の前で人が殺されてしまった。

そんなものはただのいいわけだった・・・きっとオレは自分の手を汚すのがイヤなだけだった。

この3日間、ずっと葛藤し、オレは決めた。

オレは・・・強くなる。

それを告げにこの研究所に来たとき、水科は手をとって喜んだ。
前々からすでに準備はしてあるという。

「でも・・・準備してあるのなら、なんで無理矢理にでも初めからやらせなかったんだ?」
オレは聞いてみた。

「確かにそういう意見も内部にはありました。ただ・・・結局人を護るなんていう行為は、強制されてやることではないと思っています・・・少なくとも私は。アナタと初めて話したとき、きっとアナタならばなってくれると私は確信していました。私たちのHEROに」

「そうならなかったら?」

「どうでしょうね。正直、その場合は考えていませんでしたよ」

「・・・大した科学者だな・・・いいのかそれで?」

「だめでしょうね」

微笑みながら水科は言った。

「・・・本当に、それでいいの?仁くん・・・」
ずっと黙って話しを聞いていた真由美が、心配そうにこちらを見る。

オレは、握っていた手を力強く握り替えした。
「うん。とりあえずやってみるよ。心配かけてごめんな」

もう、彼女には全てを話してある。

水科が立ち上がり、ゆっくりと説明を始めた。

これから1ヶ月、研究所内の施設にて、オレは全ての力を使いこなすべくトレーニングに入る。

理論的な理解。

肉体的な理解。

そして、実践含め・・・早い話が修行だな。

漫画みたいな話しだよ。

漫画だったら終了したときのオレは、神がかったパワーアップをして、敵を圧倒することになる。

現実はどうなのか・・・そんなもん現実で味わった事ないからわかるわけない。

説明が一通り終わったあと、厳しい顔つきで水科は言った。

「現在の状況は、非常に厳しいと言えます。仁くんを襲撃したのはただの宣戦布告と、HEROの実力を確かめる意味もあったのでしょう。あの時は小さな騒ぎにしかなりませんでしたが、あれからとうとう【GOD】は表の社会にも出てきてしまった。派手に報道までされたこの間の事件はただのスタートに過ぎない。このままでは、日本というちっぽけな国なんて、すぐに崩壊してしまいます。」

そして水科は歩きながら、オレの手を両手で握り、じっと目を見る。

「今ならまだ【GOD】と【HERO】の設計図は私と向こうの博士の頭の中にしか存在しません。【GOD】を止め、博士を拘束し、その全ての研究を無にしてしまわなければ、この世は殺戮兵器で溢れかえってしまいます。私はその為にHEROを研究した・・・!アナタしかいないのです」

「オレは正義の味方で一生過ごすなんてごめんだ・・・」

オレは立ち上がって後ろを向いた。

「仁くん・・・」
後ろから水科の声。

「勘違いすんな。真由美を送ってくるだけだよ。今日くらいは2人で楽しく晩メシでも喰って過ごしてもいいだろう?明日からは期間限定のHEROだからな」

小走りに追いついた真由美が腕を絡める。
「じゃぁ今日は何かおいしいものを作るね!」


出て行く仁と真由美を見送り、水科は椅子に腰を下ろした。

・・・期間限定のHEROか・・・。カレらしいな。

「ふっ・・・」

カレは本当にいい男だ。

優しい。そして優しいがゆえに臆病だ。

死なせたくはない・・・それはこれからの私たちの働きにもかかっているのだ。

全てが終わった時には・・・そう、全てが終わった後には、カレの事も何とかできるかもしれない。

いや、この私がしてみせる。
研究者の意地にかけて。

カレには本当に申し訳ないことをしたが、最後にその償いだけはしなければ・・・!

明日からは忙しくなる。

この間の事件。

とうとう始まってしまった・・・。



仁くんが倒されたあの日の夜にニュースは流れた。




【日本国総理、惨殺】

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/05/08(日) 04:04:03|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

ますます目が離せなくなりましたv-218
  1. 2011/05/10(火) 14:06:21 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

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