beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 14話【長編】

今までのお話し

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HERO 14話

「ぎゃっはっは!ばーか油断してんじゃねーよ」

目の前でチンピラがバカ笑いしている。

【GOD】に気をとられすぎて全然この男の事を忘れていた・・・オレもまだまだ全然だめだな。
これでは【GOD】になんて勝てやしない・・・。

っつーか水科よ・・・ナイフ貫通してんじゃねーかよアンタ。
まあさすがのスーツも、強化人間の力が加わったら防ぎきれないって事か。

背中に刺さった刃物を一気に引き抜く。
「ぐっ!!いってー・・・」

目の前の男に目を戻す。

いくらか回復はしているようだが、オレや【GOD】のような超回復はできないみたいだな。
まだ足を若干引きずっている。

「おい馬鹿野郎!痛かったか!?テメー痛覚がそのまま残ってるんだってなぁー。ひゃっはっは。あんなに深々と刺されたんじゃーそりゃー痛かっただろう。くっふっふ」

意地汚い顔で笑うヤツだ。

オレはシャツをめくり、背中を【C】に向けた。

「な・・・なんだよ。しかしパックリ傷口開いてんなーがっはっは。あれだけ深々刺したからなー。しっかし肉を刺す感覚ってたまんねーぜ。こんだけ深けりゃーテメーだって・・・」

オレは意識を傷口に向けて一気に集中した。

「・・・は?・・・なんだこれ。もうふさがったのか・・・?そんなワケ・・・」

しゃべっている途中でオレは一気に距離をつめて【C】のアゴをつかむ。

「おい。【GOD】も言っただろう?テメーみてぇな中途半端なヤツとは違うんだよ」

みっともなくヨダレを垂らしながら【C】はわめいている。
「て・・・てめぇ!てめーなんかが選ばれた人間なワケねー!」

離すと【C】はその場に膝をついて崩れ落ちた。

「あぁ。選ばれた人間なんて大したもんじゃねー。」

オレは自分の腕をナイフで切った。

血がボタボタと垂れる。

「この血も赤くて普通だろ?でもさ・・・」

もうすでに傷は塞がりかけ、血も止まっている。

「もう普通じゃねーんだよ。こんなもん、ただのバケモンだ。」

【C】は恐怖を顔に浮かべてこちらを見ている。

「普通に働いて普通に暮らしてさ。幸せな家庭を築いて・・・オレはただ、そうしたかっただけなんだけどな。オマエ、こんなもんになりてーのか?」

1歩1歩【C】に近づいていく。

「オマエなんかただ快楽を得たいだけの自己中なチンピラだ。どうでもいいんだよ本来。でも・・・オマエはそこの幸せに満ちあふれた2人の将来を奪った・・・。これからきっと、あの2人は、いろいろと苦労や悩みもありながら、それでも自分たちの未来を歩むはずだったんだよ・・・それをオマエが中途半端な快楽の為に奪った!」

「ひ・・・ひぃ」

【C】は尻餅をついたまま・・ズリズリと後ずさりする。

「悪いが、オマエは許せねーよ。」

オレは右腕を振り上げる。

「シネ」


ドガァッ!



【C】はオレの足下でぐったりしている。

紙一重だ。

紙一重でとどまった。

今、オレは確実にこいつを殺そうとしていた・・・当たる寸前までは。

コイツはクソ野郎だけど、それで腹が立ったからって殺したら同じじゃねーか。

なんとか意識を失う程度の力にセーブできた・・・間に合った。

まぁ・・・相手に与えるダメージをコントロールできるようになった事も、これで証明されたな。

力を持った人間は、その力を使いたがるもんだ。
相手を見下し、暴力に染まる。

オレはそうなるまいと思っていたけど、これでコイツをひねり殺したら、結局そういう事だ。
オレは通信機を取り出し、水科に連絡を入れた。

さてと。

こいつはとりあえず連れて帰っていろいろと調べてもらうか・・・。


「ぐ・・・ぐはぁ・・・」


突然目の前で【C】は苦しみ出した。

なんだ・・・!?

「おい!どうしたんだ!」

「ぐ・・・すずき・・・アイツ・・俺たち・・体に毒を・・・装置を・・仕込んで・・・あの野郎・・・クソ!・・・クォ・・・死にたくねぇ・・・」

「おい!自分で回復はできねーのか!」

「ぐぉ・・・死にた・・・オレの・・・人生・・・なんだったんだよぉ!誰も・・・必要とし・・・てくれねーじゃね・・か・・・・・・」


それきり動かなくなった。


「仁さん!」

研究所の人間がやってきた。

「こ・・・これ・・は?この人は誰・・・」

「死んでいる。とりあえず研究所まで運んでくれ」

・・・あ。


「先に車に行っててくれ。すぐに行く」

「・・・は、はい」

オレは血だまりの中、倒れている2人の元に行った。

「守れなくてゴメン。今は君たちの体を勝手に動かすこともできない。あと少しだけそのままガマンしてくれ」

手を合わせて黙祷する。
どうか天国で仲良く過ごせますように。

倒れている男の手が、彼女の方へ向いていた。
きっと、最後の瞬間まで彼女へ手を伸ばしたのだろう。

オレはそっと2人の体勢をなおした。

「仁さーん!こちらは出れます!」

「すまんすぐ行く」

オレは走り出した。

「では、戻ります」

車のドアを閉め、研究所へ。


後に残された浜辺には、手をしっかりと握りあった男女の遺体が並んでいた。






****************************************






研究所に戻り、オレは水科に事の経緯を説明していた。

「・・・ふむ」

水科は考え込んだまま黙っていた。

オレも、とりとめもなくいろんな事がアタマを巡っていた。

初めての実戦・・・。

まだ【GOD】との差を感じたこと・・・。

最後の【C】の言葉。

死に際にはきっとどんなヤツでも本当の心の内が出てしまうだろう。

アイツは死にたくなかったんだ。

きっと誰かに必要とされたかったんだな。

なんの為の人生だったのか。

死に際にそんな事を考えるほど不幸な事はない。

クソ野郎だったけど・・・なんだろうなこの気持ち。


「仁くん・・・大体わかりました」

水科がこちらを向いている。考えがまとまったらしい。

「ワタシと鈴木が【GOD】の完成に至るまでには、当然幾多の失敗を重ねました。どうやら、そのときの最終に至るまでに失敗したほうの細胞を活用して使っているようですね。思い当たる中で使える細胞は2体分です。当然アナタや【GOD】のような完全体には及びませんが、やり方次第ではほぼ同等に近い能力は引き出せるでしょう。先ほど運ばれてきた【C】と呼ばれていた彼は、きっと廃棄する予定だった完全な失敗細胞を使ったのでしょう。これは・・・これから解剖すればわかりますが・・・」

「では、他に2人いると言っていた【A】と【B】は、同等の力を持っているって事でいいんだな?」

「そうですね・・・ただしその細胞はもとの個体による依存度が大きいのです」

「と・・・いうと?」

「たとえば、アナタや【GOD】の細胞は、多少の影響は受けるにせよ、宿主が誰であれ一定以上の力を出すことができます。しかし、その2人の方の細胞は宿主のもともとの才能や力が大きくなるといった感じなので、無能ならば何の力も出ません」

「もし、優れた才能を持っていたら・・・その部分ではオレや【GOD】以上になることもあるのか?」

「それは・・・あります。しかしそんな安定感にかけたものまで使ってくるとは・・・。ワタシは納得いかずに廃棄しようとしていたのですが、確かに鈴木はそれを惜しんでいました」

「なんにせよ・・・きっとその2人はこれから出てくるぞ。やるしかないんだろうな」

「そうですね・・・結局は【GOD】と鈴木を止めるしかないのです。負担をかけてしまいますが・・・」

「わかったよ。ただし、これからはなるべく被害者が出る前に知らせてくれ。難しいかもしれないけど・・・もう人が死ぬのをみるのはいやだ・・・」

「全力を尽くします。闘いとは、体だけではない。精神との闘いだと思っています。だから、なるべく仁くんは普段好きなように暮らして下さい。やりたいことをやっていて下さい。闘いの事だけ考えて疲弊していては絶対に持ちませんから・・・アナタは中身は普通の人間なんです」

オレは軽く微笑んで席を立った。

「わかった。連絡もらったらすぐにでも現地に行くから。頼みますよ」

研究所を後にしようと歩き出す。

ふと立ち止まり、水科の方を向く。

不思議そうな顔でオレの顔を見つめる水科に言った。

「普通の人間だって言ってくれてありがとう。ちょっと嬉しかったよ」






****************************************






夜、真由美が夕食を作ってくれた。

お嬢様が料理できるなんて、今までは想像もしていなかった。

「はい。ビールでしょ」

オレはコップをもって注いでもらう。

「ありがとう」

一気に飲み干す。あーうめぇ。

その夜は楽しい食事だった。

いろいろな事を話し、くだらない事で笑い転げ、そしていつしか真由美は寝てしまっていた。

しょうがねぇなぁ。

真由美をベッドに寝かせる。

ほぼ一緒に住んでるって言っても、未だに真由美をベッドに寝かせ、オレはソファーで寝ている。

オレは、はっきり言って真由美が好きだと思う。

オレも男だし、何度もいままで抱きたいと思った。

一緒に寝たいと思った。

でも。

存在しないとつきつけられても、どうしても蘇る田中純としての毎日。

そして久美子。

はっきりと思い出せるあのぬくもり。

本当にあれは想像の世界でしかないのか。

「ねぇ」

ベッドから真由美の声がした。

「どうした?起きちゃったのか?」

「こっちに来て・・・」

オレはベッドに座る。

「今日は一緒に寝ようよ」

真由美はオレの顔をじっと見つめてくる。
その手は少し震えていた。

きっと勇気を振り絞って言ったのだろうな。

急にいとおしく思えた俺は、気がつくと思い切り布団の中で彼女を抱きしめていた。

「ねぇ・・・私の事・・・好き?」

「うん。好きだよ。いつもありがとうな」

「じゃぁ・・・」

「うん・・・」


丁寧に真由美の服を脱がし、優しく抱きしめる。

人の肌って、こんなに暖かいものだったんだな・・・。

思えばいろいろあったよ。
もう、白鳥仁を受け入れて、田中純を忘れてしまわないといけないんだな。

そう。

オレは白鳥仁・・・。

真由美と優しく唇を重ねる。


その瞬間。


鮮明にアタマに蘇った風景。



真冬の空。

雪が降り積もる。

下から見上げる久美子・・・。

「これからたくさん思い出作っていこうね」

そう、これが初めてのキスだった。


オレはハッとして目をあける。

「すまん」

真由美は、ただこちらを見ている。

「やっぱり・・・ダメ・・・?」

オレは体を起こして座り直す。

「オレは真由美が好きだよ。もう少し、もう少しだけ待ってくれないか。すまん・・・」

真由美が背中に顔をつけて寄り添う。

「ううん・・・。大丈夫だよ。時間なんてゆっくりかけていけばいいんだから。気にしないでね」

「スマン・・・」


バァーン!


「痛っ!」


背中を思いっきり叩かれた。

「ほらほら大の男が背中丸めてないで!もう寝て明日何もなかったらどっか行こうよ。ねっ」

思わずクスッと笑ってしまう。

本当にこういうところにいつも救われている。

「うん・・・オヤスミ・・・」

オレはソファーで横になった。

真由美にいつも救われているが、これでいい良いワケないよな。

あいつだって本当はつらいんだ。

オレが、、、はっきりしないとな。

田中純なんて本当はいないんだ。久美子も・・・。
オレだってこれからいつ死んでしまうかわかんねーんだぞ。

これでいいのか。

これで・・・。

いつしか眠りに落ちていた。






****************************************






ブラブラと街を歩いていた。

結局真由美はどうしても家の用事が入ってしまって、オレは1人で時間をつぶしている。

こんな時に学校とか行っててもなー。

でも何もすることがねーしなー。

ってことで、ブラブラしている。

気がついたら、田中純の記憶の中で住んでいたアパートの前に来ていた。

やっぱり、アパート自体跡形もない。

幻だったのか・・・。

いつもクソサービス残業をイライラしながらこなして、家に帰る。

おかえり!と笑顔で迎えてくれる久美子。

すでに部屋の中にはうまそうなニオイが立ちこめていて。

座るとキンキンに冷えたビールを注いでくれる。

不思議ともうオレも笑顔になっていて、つい5分前まで感じていたイライラの微塵もなくなっている。

稼ぎが少ないオレは金もなく、安い発泡酒で満足する。


ちょっと前にあったハズのそんな日常が、ずいぶん遠く感じる。

今は有り余る金が財布に入っている。
それなのに、あの頃の発泡酒の味を思い出すと胸が温かくなる。

でも、いつまでもしがみついてちゃーな。

水科も、存在しないと断言していた田中純。

きっと、なんかの間違った記憶なんだ。

今のオレには、大事にしなきゃいけない人間がいるじゃないか。


考え事をしながら、オレの【間違った記憶】の中でいつも歩いていた道を無意識に歩いていた。



そのとき、目の前を猛スピードでトラックが通り過ぎて行った。

それだけならば、ただのスピード出し過ぎって事なんだが。


一般の人にはわからないだろうが、オレにははっきりと見えた・・・。


その運転手は完全に居眠りをしていた。


案の定ふらふらし始めるトラック。

オレは全力で走り出した。

トラックは急にハンドルを取られ、歩道につっこんでいく。


その前には歩いている女性の後ろ姿。


そこにトラックが突っ込み、驚きで悲鳴をあげる女性。


一瞬のあと。


トラックと女性の間にオレはいた。


右手で女性を抱え、左手でトラックを止めた。

いってぇー・・・さすがにトラックはつえーな・・・。左手の骨は折れてるな。

素手でトラックを止めるなんて見られたらマズイ・・・が、あのまま女性だけ助けたらトラックの運ちゃんは間違いなく壁に突っ込んでいた。

良くて重傷、悪くて死んでいただろう。

間に合った・・・。

幸い、あたりに他の人はいない。

女性は気を失ったのか腕の中でうなだれている。

トラックの運ちゃんだけが、目を剥いてオレを見つめている。

事故りそうになったショックで目をぱっちり覚ましやがったな・・・まいったな。

女性を抱えたまま、オレはトラックのドアを開けた。

「事故がなくて良かったな」

まだ若そうなトラックの運ちゃんは目をぱちくりしながらうなずいている。

「あの・・アナタはいったい・・・」

「キミは事故で人を轢くところだった。それがなくなって良かったな。そうだろ?」

コクコク。うなずく運ちゃん。

「一切他の余計な物は見ていない・・・そうだろ?」

コクコク。うなずく運ちゃん。

「じゃぁ、安全運転でいきたまえ。仕事なくなっちゃうぞ」

コクコク。うなずく運ちゃん。

「よろしい。オレもキミが人を轢きそうになったのは見ていない。キミも、何もみていない。そして何事もなく走り出す。ね」

コクコク。頷きながらドアを閉め、トラックは走り去った。

まぁ、誰かに言ったとしても誰もしんじねーからいいけどな・・・。


そして、腕の中に抱えたままだった女性がもぞもぞと動いた。


「う・・・ん」

「お・・・目が覚めたかな?トラックが突っ込んできたんだけど、そこはさすがプロのドライバー。神がかったハンドルさばきで持ち直して走っていったよ。ハハハ」

「すいません。アナタが助けてくれたんですか?」

「いやーだからトラックのハンドルさばきがね・・・」





下から見上げるその顔は・・・。





久美子だった。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/05/29(日) 05:37:25|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<連穂選んで種を採れ | ホーム | HERO 13話【長編】>>

コメント

ん~・・・

いろんなことが・・・
複雑に絡み合ってきて・・・
実に・・・良いです!!  面白いです!!

この話って、結末まで、出来上がっていたりするんですか?
  1. 2011/05/30(月) 09:55:24 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

む~

話し自体の大筋は一応決まってますが、書きためなどはしていません。
1話1話リアルタイムに考えて毎回ここに直接書き込んでいますよー。
  1. 2011/05/30(月) 21:27:33 |
  2. URL |
  3. 平 #-
  4. [ 編集 ]

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