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HERO 15話【長編】

今までのお話し

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HERO 15話

どれ程思い浮かべただろう。

どれ程忘れようと努力しただろう。

けして美人などではないが、丸くて愛嬌のあるその顔。

どんなに悲しいことやつらいことがあっても、見るだけで不思議といつも安心感を覚えたその顔。

その顔が、いまオレの目の前のある。

「手・・・」

え?

「あの・・・手・・・ケガしてるんじゃないですか?」

あ・・・忘れていた痛みが襲ってくる。

「いや、全然平気・・・痛っ」

もうすでに骨はくっついている様だが、打撲で真っ青になっている。

久美子はオレの手を取ってハンカチできつくしばった。

「私の為にごめんなさい。痛いかもしれないけれど、動かすと悪化しちゃうから固定しますね」

「あ・・・ごめん。ありがとう」

オレがわからないのか?と思った瞬間、今の姿が白鳥だということに気がついた。

しかし、本当に久美子なのか・・・?

実在していたのか・・・?

そうだとすれば、あの日々はやはり存在していたのか?

「あの・・・痛みますか?大丈夫ですか?」

はっとした。

ずっとオレはぼんやりとしていたらしい。

「少し聞いてもいいかな?」

「はい・・・なんでしょう?」

「田中・・・田中純という男を知っているかな?」

自分の事を訪ねるなんて、不思議な感じだった。

「純・・・・・」

久美子は一生懸命考えこんでいる。

「すみません。存じ上げません」

・・・・・!

やはり別人なのか。

「でもその名前・・・何か・・・何か懐かしい感じがします」

と言いながら、少し眉間にしわをよせる。

「大丈夫!?やはりどこか痛いんじゃ・・・」

「大丈夫・・・です。何か思い出そうとしたらモヤモヤしたものが頭の中に広がるような・・・スッキリしない感じで・・・」

「ごめん。気を失っていたばかりなのに、変な質問なんかして・・・もう大丈夫だから。家まで帰れるかい?」

「いえ私こそ・・・あなたは私のためにケガをしてしまったというのに。これから病院に一緒にいきましょう」

久美子は立ち上がり、オレの手をとった。

「いやいやオレは大丈夫なんだ。こんなケガすぐに治るから」

言った瞬間強い口調で返事が来る。

「ダメです!そうして過信するのが一番ダメなんです!何かあったらどうするんですか!さぁ行きましょう」



「・・・どうしたんですか?やっぱり痛みますか・・・?」

自分でも気がつかないうちに涙が溢れていた。

大の男が大粒の涙をポロポロ落としているんだから、そりゃぁどうしたかと思うだろう。

でも・・・。

でも・・・。

目の前にいるのがあまりにもオレの知っている久美子そのもので・・・。

普通初めて会った人間にそんなに強くでるかっつんだよ。
自分を助けてくれたとはいえ、得体の知れない初めて会った人間の事をそんなに本気で心配するかっつんだよ。
実は悪い人間だったらどうするんだ。

純粋で・・・誰にでも心の壁がない。

間違いなく、オレの知っている久美子だということが、理屈じゃなくわかっってしまった。

「いや・・・ごめん。花粉症なんだ。ケガは関係ないんだ」

「こんな時期に花粉症・・・?大変なんですね・・・。いきなり強い口調で差し出がましい事を言ってごめんなさい。でも、お願いだから一緒に病院に行って下さい」

優しくずっと久美子はハンカチでしばったオレの手をさすっている。

いろいろと話しをしたい衝動にかられているが・・・今オレがすぐにやらなければ行けないことはそれではない。

「ありがとう。キミは本当に心のキレイな人だ。でもオレは、どうしても急がないといけない用事があって、行かなければならない。その後ちゃんと病院にいくから」

「・・・そうですか。心配だけど、しょうがないですね。でも、必ず病院に行って下さい!約束ですよ!」

思わずクスッと笑ってしまう。
いつもそうだったな。いつだって誰にだって心から言葉を投げかける。

「わかった。約束する。キミこそケガは無いにしろ、今日は帰ったら無理しないで休むんだよ。」

「さっきは泣いていたのに今度は笑顔でですか・・・忙しい人ですね・・・。」

笑いながら彼女は言う。

「そうだな・・・変なヤツだよオレは」

「何か、アナタは初対面なのに、ずっと知っているような・・・懐かしい感じがします。そういえば、恩人のお名前を伺うのを忘れていました。失礼ですがアナタのお名前は・・・?」

「オレは・・・白鳥・・・白鳥仁と言います」

彼女はオレの手をギュッと握って言った。
「不思議・・・お名前も初めて伺うのに・・・。では改めてお礼させて下さい。これ私の連絡先です。いつでも良いのでご都合の良いときに連絡をお願いします」

そっと手の中に紙を渡された。

「それでは、また・・・」

歩き出そうとする彼女をみてハッとした。

「あ、待って!キミの名前は・・・!」

立ち止まり振り向く彼女は、満面の笑みを浮かべて言った。

「ごめんなさい!自分の名前を名乗るのも忘れるなんて・・・!私は・・・斉藤久美子と言います!」



それは・・・やはり聞き慣れた名前だった。



****************************************



オレは白鳥仁のマンション前にいた。

エントランスを通り抜け、エレベーターに乗る。

ずっと考えをまとめながら移動していたらあっというまに着いたな。

オレの頭の中では、ある仮説がまとまりつつあった。
考えれば考えるほど、確信が強くなる。

部屋に入る。
真由美は・・・居ないようだな。

確か・・・古いアルバムがあったハズ。

少し探したら見つかったそのアルバムを、片っ端から眺めた。

今までこの部屋をちゃんと調べた事もなかったな・・・迂闊だった。

机の引き出しの奥から、古い日記帳が見つかった。
ブログ全盛のこの時代に手書きの日記とは・・・結構古風な所があったんだな【白鳥仁】は。

日記は、中学生の頃から、現在に至るまで続いていた。

文章は短く、そっけないものだったが、感情やその時の考えがとてもよくわかる内容だった。

当然、【オレ】が書いたものではない。

もう・・・十分だ。


オレは、水科の元へ向かうべく部屋を出た。


マンションのエントランスでいつものように「いってらっしゃいませ」と挨拶された。

「ありがとう。オレは今まで愛想も態度も悪かったかもしれないが、本当はそうやって気持ちよく挨拶してくれるアナタにいつも感謝していたんだ」

そう声をかけると、彼は驚いた顔でこちらを見つめていた。

さて・・・そろそろ白黒をつけないとな。


マンションを出て歩きながら、オレの頭の中はもうすっかり確信に満ちた考えでまとまっていた。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/10/16(日) 13:20:08|
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