beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 16話【長編】

今までのお話し

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HERO 16話

研究所の真っ白な壁に囲まれた部屋で、オレは水科と向かい合って座っていた。

「そろそろ本当の事を話してもらいたい。オレはもう事実を知っても大丈夫だ」

オレがそういうと、水科は首をかしげ「?何の事でしょう・・・?」と目を丸くして言った。

「もういいんだ。どういう意図があって隠していたのかはわからないけれど。オレにはもう確信がある。今日・・・偶然だけど、久美子に会ったよ。オレが一緒に暮らしてた人だ・・・この場合のオレってのはもちろん【田中純】の事だけどな」

「仁くん・・・何度も言いますが、【田中純】は存在しません。その久美子さんだって、きっとたまたま想像の人物と一致しただけです」

今までのオレならば、ここでもう自分の考えに自信が持てなくなり、揺らいでいただろう。
なんせ確固たるものなんて何一つもなかったのだから。

「確かに久美子は【田中純】を知らないと言った。オレも一瞬あきらめそうになったよ。でも、考えてみれば今までにその疑問を払拭するキーワードは出ていたんだよな」

・・・・・。

水科はじっと黙って聞いている。

「オレの目の前で母親を惨殺されたあの子は・・・後のトラウマが残らないように記憶を改ざんしたんだよな?」

水科は俯いたまま顔をあげない。

「単刀直入にオレの考えを言う。あの日、白鳥仁が事故にあった。脳に重大な損傷を負ったというのも本当なのだろう。そこにたまたま同じくして他の場所で事故にあったオレ【田中純】がいた。それを利用したのじゃないか?」

「仁くん・・・それは・・・」

「初めはオレの事故も仕組まれたものだったのかと思った。でも、仁の事を少し調べてみたがやはり俺との接点など何もない。きっと偶然だったんだろう。脳が死んでしまった仁に、俺の脳を移植した・・・違うか?そして俺の周囲の人間の記憶を改ざんした。【田中純】など初めからいなかったように」

水科は大きな息を吐き・・・こちらを向いた。

「これ以上・・・無理なようですね。全て話します。もともと隠すというのは私も本意ではなかったのです」

「頼む・・・。こんな何かがひっかかった状態のままじゃぁ、オレは何もできないよ」

それから水科は、あの日からの全てを語り始めた。

それはいくつかをのぞいては、ほぼ推測通りだった。

あの日、白鳥仁は事故にあった。

体も重傷、その上に脳死状態だった。

予定ではまだ先であったが、【HERO】の細胞を移植することを決めた。
治療しても回復は絶望、【HERO】の細胞がうまく融合すれば驚異的な治癒で治るかも・・・確実とは言えなかったが、それにかけるしか手段は残されていなかった。

しかし、重要な問題が一つ。

体はどんな重傷でも治癒するだろうが、脳が死んでいては無理であろう事。

時を同じくして、別の場所で事故があり、重体患者が病院に運ばれてきた。

彼の名は田中純。
こちらは体の損傷が激しく、着いた瞬間に心停止していた。

ここで水科は思いつく。

この心停止したばかりの彼の脳細胞を使って白鳥仁を蘇らせられないかと。

そうして手術は行われた。

オレは勘違いしていたのだが、脳をまるごと移植したのではなく、重大な損傷を負った白鳥仁の脳のほんの一部分を田中純の脳から補ったと言うことらしい。

傷が癒え目が覚めてからも白鳥仁は、白鳥仁のまま順調に生活していた。

そしてある日目が覚めたらいきなり・・・中身が田中純になっていたってワケか。

「オレは・・・白鳥仁の日記を読んだんだ。しっかりとオレがあの部屋で目覚めた前日まで書いてあったよ。それで確信した。ある日いきなり田中順が出てきてしまったんだってね」

水科からはさっきまでの鋭い目つきはすっかり消え失せ、穏やかな顔になっている。

「そうですか・・・日記ですか。人間の脳は不思議な物です。これだけ科学が発達しても、やはり完全な制御などできないのかもしれない。記憶中枢を司るところを移植したわけでない・・・ほんの小さな組織を移植しただけなのに、完全に田中純が出てくるなんて・・・予想もしなかった。最初アナタから話しを聞いたときはびっくりしました。仁くんが嘘をついているのかもと疑ったりもしましたよ」

「オレもアンタの性格はそれなりにわかってきているつもりだ。きっとアンタはこんな事をして良いものかと自分を責めて苦しんでいたんだろう?でも、真実を話してオレがどういう態度にでるかもわからない。いなくなってしまうかもわからない。悲観して自殺してしまうかもわからない。そうなったら【HERO】はいなくなっちまうからな」

「返す言葉もありませんよ・・・。でも、これだけは信じて下さい。私もアナタと触れあうウチに、アナタは決してそんなに弱くない人間だと確信しました。真実を話そうと思っていたのです」

目頭を押さえながら下を向く水科。

「オレは・・・田中純は、本当はもう死んでいたんだよな?」

「えぇ・・・。病院に着いた時にはすでに息を引き取っていました」

「じゃぁしょうがないよな。結局死んでんだから。オレの体はどうなった?」

「損傷も激しく・・・埋葬しました。こんな事を言っても言い訳にしかなりませんが【HERO】の事は極秘中の極秘なので、その時に周囲の方々にも手を打たせていただきました・・・」

オレは水を一気に飲み干し、椅子にもたれかかった。

こんな事実を聞いたってのに、妙に心は落ち着いている。

もう心は決まっているからか。


「わかったよ。オレは白鳥仁でいい。田中純は死んだ」

驚いたように水科が顔を上げる。

「いいのですか!?ただ死んだという事でなく、このままでは久美子さんも他の方も、アナタという人物を思い出さないまま人生を過ごしていく・・・アナタはこの世に居なかったことになるんですよ」

オレは苦笑する。

「いいさ。記憶を取り戻させてどうするんだ?田中純は死にましたって言うのか?白鳥仁として生きていきますっていうのか?どっちみち悲しませるのなら、このまま違う人生を生きたほうがいいんだ・・・存在しなかったなんて、親には悪いけどな。まぁ、どっちみち死んだら会えるんだから、オレは精一杯生きたってそこで言えば許してくれんだろ」

水科はボロボロと泣きながらこちらをみる。

「アナタは・・・強い人だ・・・!この闘いが終わったら、私にできる償いはなんでもします」

「そう全部責任を感じる事はないよ。きっとこれも何かの運命だったんだと思うよ。ただ・・・一つだけお願いがある。闘いが終わったら・・・白鳥仁の人格をなんとか戻してくれないか。夢の中で意識がシンクロしたこともあるし、きっと仁はいなくなってしまったワケではないと思うんだ」

「え・・・。仮にそれができたとしても、そうしたらアナタは・・・」


オレは・・・。


「オレは全てを終えたら消える。仁には、まだやらなきゃいけない事があるんだ」


電話が鳴った。

「・・・わかった」

電話を切り、こちらを向く水科の顔が険しくなっている。

「こんな時なんですが、どうやら現れたらしいです。場所はA区の繁華街、警官3名が負傷。その人物は銃弾を素手で止めたというから間違いないでしょう。男女の2人組のようです・・・行けますか?」

オレは立ち上がり、言う。

「オレは決めたんだよ。今度こそ終わらせてやる」

歩きだすオレの背中に水科が声をかける。
「仁・・・純さん!必ず生きて帰って下さい!全てが終わったら・・・終わったら・・・」



「終わるまでは・・・オレは白鳥仁だ。行ってくるよ」



****************************************



A区。

警官3人が銃を構えたまま何かわめいている。

あそこか。

警官に近づき、その銃を振り上げた手に触れ、そっと下ろす。

「やめておけ。もうわかったと思うけれど、そんなものは通用しない」

緊張に顔を赤くした若い警官は、鼻息を荒くして言う。

「キ・・・キミは?誰だ!?」

その時、若い警察官は無線に呼び出され応答する。

「は・・・はい。しかし・・・はい。わかりました」

こちらを振り向き、「引き上げ命令だ。特殊部隊が今ここを取り囲んでいる。一斉に突入がはじまるからすぐにキミも待避しなさい!わかったね!」

そう言うと一斉に走り出した。

もちろん特殊部隊なんていない。
オレが説得するのも困難だったろう・・・ありがたい。


さて、と。


前方から2人組がゆっくりと歩いてくる。

1人は若い女だ。20代くらいだろう。真っ赤なチャイナドレス・・・サイドの切れ目から真っ白な長い足がのぞいている。赤い口紅に濃いアイメイク。ケバいなしかし。

もう1人は・・・おっさんだな。冴えない普通のおっさん。しかも・・・なにかオドオドしたような・・・怯えてる?

「良く来たね【HERO】。なるほど、すぐわかるねこれは」
女が口を開いた。

「オマエラが【A】と【B】ってやつか?」
何か違和感を感じる・・・何だろう。

「さぁね・・・どうかしらね。試してみたら?」

ゆっくりと女が近づいてくる。

おっさんは無言のまま動かない。

そのとき、ガタッと音がした。

見ると、柱の陰に人が倒れている。

しまった!もう誰か巻き込まれていたのか!?

オレは駆け寄って抱き起こした。

・・・!

「ガクじゃないか!おいしっかりしろ!」

小柄で眼鏡。

幼なじみの学だ。

「う・・・うん。仁?あれ?」

「どうしたんだ?ケガはないか?」

「歩いてたらいきなり衝撃がきて・・・どうしたんだろ?痛っ!足をケガしたみたいだ」

とりあえず生きてて良かった・・・小さい頃から仁が心を許していたコイツに何かあったらオレは・・・。

「ガク・・・詳しいことはともかく、とりあえず身を伏せてじっとしてろ。ここは危ないんだ」

「何だかわからないけど、仁がいうならそうなんだろ・・・わかった。」

「敵を前にしてずいぶん悠長なのねアナタは」

女はさっきの位置から動いていなかった。

ホッとした反面、何かやはり違和感があった。
何故完全無防備だった今、攻撃してこなかった?

とにかく遠くへ行かなくては・・・ガクが巻き添えになってしまう。

走り出した瞬間、2人組の1人のおっさんが銃を撃ってきた。

いきなりで少し驚いたが、弾道を見極め、かわす。

「やはり反応は早いわね」

腕を組んだまま女はこちらを見ている。

おっさんは今度は足下からでかい機関銃を拾い、ぶっ放してきた。

これは・・・避けたらガクに当たるかもしれない!

目に意識を集中して全ての弾道を見極め、手に全ての意識を集中しつつ銃弾を落としていく。

「なるほど・・・。大体【GOD】に聞いた通りね・・・」

女が腕を組んだまま見つめてブツブツ何か言っている。

【GOD】と確かに言ったな。

やはりこいつらは【A】【B】に違いない。

しかし、、、なんだろうか。この違和感は。

「おまえらは【GOD】が言っていた【A】【B】なのか!?」
オレは声を張り上げていた。
なんだろう。何かとてもイヤな予感がする。

腕を組んだまま微笑を浮かべ、女は答える。
「えぇ。その通り。【A】【B】はここに揃っているわよ。しかし予想以上ね【HERO】。私では勝てないわ」

おかしい。

勝てないと言っておきながらあの余裕は何なのだろう。

おっさんは攻撃してきたが、女は攻撃すらしてこないで見ているだけ?

おっさん・・・銃で攻撃?オレたちが銃で攻撃なんかするか・・・通用しないのはわかってるだろう?
それにあのおびえた顔は・・・。

「そろそろいいかな」

女が一瞬おっさんの方を見た。

おっさんはひどくあわてたように銃をぶっ放す。

こちらに弾は飛んでこない。

飛んだ先には・・・・ガクだ!

アノ野郎!そういうことか!
はなっから人質として使うつもりだったな!

オレは全力で走り、ガクに覆い被さる。

・・・ぐっぅ!

銃弾は勢いよくオレの背中に打ち込まれる。

2・・・3発当たったか。

「汚ねぇマネしやがって!銃なんかで攻撃しても無駄だ!こんなものはすぐに治る!」

オレはガクを背にして立ちはだかる。

女は淫靡な笑いを浮かべている。
何だ・・・このイヤな感じは。

「知ってるわよ・・・。全てはシナリオのまま進めただけ。ちなみにね。私は【A】」

女が話している時、後ろからガクの小さい声が聞こえる。
「仁・・・ごめんね」

「あやまんなよ。おまえは何も悪くない。巻き込まれただけだ。すぐに安全なトコいくからな・・・待ってろよ」

イヤな予感は渦巻いたままだ。何なんだ。何を見落としてるんだオレは。

女の話は続く。

「そしてこのおじさんは・・・」

振り向いた女の手がおっさんの胸を貫いて赤く染まる。



「脅して言うことを聞かせてただけの、ただのおじさん・・・。」


「ね。【B】」



熱い。

胸が熱い。

視線を落とすと胸から赤く染まった手が突き出ている。

何だ・・・?ガク・・・。



「ごめんね仁。死んで」


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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/10/16(日) 13:21:24|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<HERO 17話【長編】 | ホーム | HERO 15話【長編】>>

コメント

いやだ~

仁さん殺さないで・・・

切なすぎですって・・・

続き待ってます
  1. 2011/11/02(水) 12:18:10 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

コメントありがとうございます。
どうしようかな・・・(笑)
  1. 2011/11/09(水) 06:43:21 |
  2. URL |
  3. 平 #-
  4. [ 編集 ]

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