beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 19話【長編】

今までのお話し

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HERO 19話

「いい風だな」

いつもの公園も、夏を過ぎて秋の到来を感じさせる風景になってきた。

「そうだね。夏もいつの間にか終わっちゃったんだなぁ」

遠くを見ながらガクが言った。

ガクは、もちろんあの日の記憶は消去させられている。
【HERO】の存在は、例え身近な知人であっても知られてはいけないらしい。

オレはタバコに火をつけながら言った。
「もうすっかりケガの具合もいいのか?」

「うん。なんだか記憶が曖昧でよく覚えていないんだけど、事故で頭を打ったからだって。ケガはもうすっかりだよ」

「そうか。良かったな。まぁ事故には気をつけろよ?」

ガクは立ち上がって伸びをしながらこちらを振り返る。

「なぁ・・・一ついいかい?」

「改まってなんだよ?」

「バカみたいな話しなんだけど・・・。聞き流してくれてもかまわない。夢の中でね。仁に会ったんだよ」

「なんだよ。やめろよ夢の中にまで登場させるのはよ・・・」

言いかけて、ガクの眼差しが決して冗談を言っているものではない事に気づいた。
それどころか、意を決して大事な事を言う目だ。これは。

「それは【本当の】仁だった。粗暴で、人の言う事も聞かなくて、でも・・・本当は優しいんだ」

オレは、言葉が出てこなかった。
記憶は確かに消去されているハズなのだが・・・そういう問題じゃないんだな。

「うん・・・」

やっとの思いでそれだけを口にした。

「何をいってるんだろうな。ごめんごめん!でもね。なんか久しぶりに仁に会ったような気がしたんだ」
ガクは笑顔でそう言った。

これで。

本当に・・・これでいいんだろうか・・・。

「ガク・・・本当はオレは仁じゃないって言ったらどうする?」

覗き込んだガクの目は、真剣だった。

「なんてなー!お前が分けわかんない事言うからさ」

「信じるよ」

え?

驚いてガクの方を振り返った。

「信じるってお前、こんな漫画みたいな話・・・」

「僕はね。自分が信じる人の事は何があっても信じるんだよ。それが今の仁でも昔の仁でもね」

ガクは隣にゆっくりと腰を下ろす。

「【心】ってさ。目には見えないんだよね。だから、感じるしかない。感じ方も人それぞれで、なんとまぁ曖昧なものだよね。でもさ、目に見えるものは欺けるけど、目に見えないものを欺く事はできないんだ。とにかくキミはいい奴だ。だから今は何も聞かないよ。それでいいかい?」

オレは心臓を鷲掴みにされたような気分だった。

「今は・・・何も言えない。来年の春にはきっと全て笑って話せるよ」

ガクがプッと吹き出してオレの背中をバンバン叩く。

「なんてね!余りにも真剣に冗談を言おうとしてるから乗ってみただけだよ!」

「わ・・わかってるよ・・・!」

オレは新しいタバコを取り出して火を着けようとした・・・が、ガクがそれを奪う。

「タバコの吸い過ぎはダメだ。さっきからもう3本目だぞ。さぁ、そろそろ僕は帰らないと」

「・・・。おせっかいだなぁ」

オレは笑いながら立ち上がる。

「そうさ。仁は昔から我がままで人の言う事なんか聞きやしない。だから僕だけは絶対におせっかいをやめないって決めたんだよ」

ガクとオレは顔を見合わせたままニヤリと笑い、歩き出した。

「じゃーなガク。また落ち着いたら連絡すっから」

手を振って別れる。

「ねぇ!」

後ろから声が聞こえてオレは振り返った。

「来年の春、個展で僕の絵を飾ってもらえる予定なんだ!絶対に見に来てよ!」
手を振りながらガクが叫んでる。

「わかった絶対に行くよ。白鳥仁は約束は守る!」

そうさ。来年の春。
その約束はオレが絶対に叶えさせてやる。

そうすると、ガクは意外な返事を返して来た。

「今のは仁に言ったんじゃないよ!じゃーねー!」

遠ざかる背中が見えなくなるまで、オレはそこに立ちすくんでいた。

仁、お前は周囲に嫌われているのかもしれないが、すくなくともお前を待っている、とってもとってもいい人間をオレは数人知っているぞ・・・戻ってこなくちゃな。






****************************************





今日も何もなかったな。

オレは、一刻も早く全てにケリをつけ、ハッピーエンドを作り出さなきゃならないんだ。
焦る気持ちが沸き上がってくる。

ふと前を見ると、一人の女性が大きな買い物袋を抱えながら歩いている。

食材やらなんやら目一杯詰まった袋を両手で前に抱えているが、あれでは前がよく見えないだろう。

と、思っていたら、案の定転んだ。
中身が散乱する。

やれやれと、オレは足下に転がって来たジャガイモを広い、渡そうと近づいた。
まるでアイツみたいな事をする子だな。

「はい。あんなに目一杯掲げて歩くと危ないですよ」

「あ!どうもすみません!もういっつも私こういう事ばっかりやらかしちゃって・・・」

「あっ」

お互いが一瞬止まった。

久美子だった。

「あなたは・・・どうもこないだは・・・。あ、すみません。すぐに拾うんで待ってて下さい!」

「一緒に拾いましょう」

2人で全て拾って袋に入れる。

いいですいいですという彼女を何とか制してオレが持ち、歩き出した。

小さい彼女はこちらを見上げながら話しかけてくる。

「あれから・・・大丈夫だったんですか?本当に医者にいきました?」

「え・・えぇ。もちろん」

じっとオレの顔を覗き込んでくる。

「ウソばっかり。私にはわかるんです。そういうの。ちゃんと行って下さいって言ったじゃないですか」

そうだった。
不思議なほど人の嘘に敏感な子だったのだ。
いつも簡単に見破られてたっけ。

「どうしたんですか?何か笑ってるみたい・・・」

思い出しながら、オレはニヤついていたらしい。
いかんいかん。

「とりあえず今日はウチに寄って一緒に夕食をごちそうさせて頂けませんか?」

「い、いや!そんな事までしてもらう訳には!」

「でも連絡先渡したのにかけて来てくれないし、今日も荷物もって頂いてるし、私はお礼をしなくちゃいけないんです!」

オレは激しく狼狽した。
あまり関わりを持つのはまずい・・・が、どうしようもなく、オレの心は惹かれている。

「大丈夫。私は一人暮らしです。家で一人で食べるのも寂しいと思っていたので・・・良かったらでいいんですけど」

「じゃぁ・・・少しだけ・・・」

とりあえず、今の近況を見ておきたい。
それだけだ。

それだけ。

それで安心すれば、もう心残りもなくなる。






****************************************






「もうすぐでできますから、少し待っていて下さいね」

台所から声がする。

広くはないが、よく片付いていてきれいな部屋だった。

男の痕跡は・・・ない。

いやいや、何を安心しているんだオレは。
むしろあった方がいいんだろうが。

「ごめんなさいね。カレーなんかで良かったかなぁ?わかっていればもっと何か用意したんですけど」

てきぱきとテーブルの上に並べて行く。

「いや、カレーは好きなんです」

「そうですか。よかった」

久美子は運び終えてオレの正面に座る。

「じゃぁ、いただきまーす」

2人で声を揃えて言う。

一口食べただけで、オレは一気に昔に戻された。

いつもの味。

献立に困るといっつもカレーになってた。
オレは、またカレーかよーと文句を言うが、食べたとたんに黙る。
結局カレーはいつ喰ってもうまいんだよな。

「どうしたんですか!」

声をかけられて我に帰返った。

無意識にオレは涙を流していたらしい。

まずい!これはまずい。

「いや、ちょっと目にデカいゴミが入って・・・大丈夫、今とれました」

「びっくりした!泣くほどマズイのかと思った!」

思わず、声を出して笑ってしまった。
彼女は冗談じゃなくて本当にそう思ってしまう人だからな。

「白鳥さんは見たところ随分お若いけど、学生さん?」

「そうです。久美子・・・さんは、何をされているんですか?」

「私はスーパーで働いているんです。そっかー白鳥さんから見たら私なんかもうおばちゃんね。ふふふ」

・・・オレの方が年上だっつーの。まぁ言えないけども。

それから、他愛もない話をいろいろとした。

いつの間にか、久美子は敬語じゃなくなっていた。
オレはさすがに今の年齢からして敬語にしておいたが。

彼女には、やはりオレの・・・田中純の記憶はなかった。

今はつきあっている人間はいないが、スーパーの支配人から告白されているらしい。

「とてもいい人で優しくてね。優しすぎていっつも損ばかりしているような人なの」

「その人と・・・付き合わないんですか?」

「うん・・・申し分ない人よ。でも・・・どうしても、心に引っかかりがあって」

「え?それは・・・?」

久美子は立ち上がった。

「お茶、入れなおしてくるね」

オレは何気なく見た棚の上にあるものを見たときに、一瞬呼吸ができなくなった。

上にあるコルクボードに、1枚の写真が貼ってある。
海の前で久美子が立っている写真。

それは。

オレが撮ったものだった。

2人でオレの故郷の新潟に言ったときのもの。
日本海を知らない久美子に海を見せに行った。

久美子は、オレの両親の墓に挨拶をしたいと言ったのだが、どうしても仕事に間に合わないと行けなかったオレは、改めてまた来ようと言い、そのまま帰った。

本当はそれは言い訳で、近々のプロポーズを考えていたオレは、その後でしっかりと2人で報告に行きたいと思っていたんだ。

もっとも、永久にその機会はなくなってしまったんだけどな。

「なぁに?じっと壁なんか見て」

お茶を持って久美子が戻って来た。

「い・・・いや、あの写真、海がきれいだなと思って」

あきらかに動揺しているオレは、不自然だったかもしれない。

「あぁ、その写真?そうねきれいな海ね。でも・・・実は何の写真なのか覚えてないの」

「え?」

「さっき言いかけた事もそれに関係しているのかもしれない。あのね。私には少し前まで付き合っていた人がいるの」

オレの心臓が跳ねた。

覚えているのか?

「でもね。顔も名前も全く思い出せないの。確実に付き合っていた痕跡もあるし、ときどき不意に思い出す事があってね。あそこには言った事がある・・・誰かと。あの映画は観に行った・・・誰かと。みたいな・・・」

「きっと、あまり記憶に残らないような男だったんですよ。オレも過去付き合った女の子で、顔とか思い出せない事ありますよ」

オレはかろうじて笑顔を作って言った。

「そうかもしれない。ただ忘れてしまっただけなのかも。でも、何か気になってね。考えてみれば、昔からここに住んでいるけど、違う場所に住んで来た気がしてきたり・・・まぁ、気のせいと言えばそれまでなんだけどね・・・とってもとっても大切な・・・何か・・・何かが足りない気がして」

「きっと・・・気のせいですよ。いろんな事で影響受けちゃったものをよく覚えてて混同してしまったりとか、そういうのもありますよオレも」

なにか必死になっているオレに久美子はニコリと笑いかけた。

「そうね。ごめんね。訳のわからない話して。その写真もね、忘れちゃってるから大した事ないのかもしれないんだけど、なぜか手放しちゃいけないような気がして、飾ってあるだけなの」

これ以上ここにいるのはマズイとオレは思い、立ち上がった。

「そろそろ、帰ります」

「うん。ありがとうね!今日ね、お礼をしなきゃなんて言ってたんだけど、本当はちゃんとお話してみたかったんだ。あ、でも不純な目的じゃないんだよ!何かうまく言えないけれど、白鳥くんと話していると、何か懐かしいような・・・不思議な気持ちになったものだから・・・ま、こんなおばさんに口説かれてもね!ふふふ」

オレはきっと、これ以上ここにいたらもう泣いてしまう。

こんなに近くにいるのに。

こんな近い距離にいる久美子に触れることもできない。

そう。

もうお互いが触れ合える道は、完全に途切れてしまっているのだから。
あの日から。

オレはこみ上げる物をこらえて、ぐっと顔を上げた。

「おばさん・・・っていう歳でもないでしょう。お姉さん」

「ふふ。ありがとう!白鳥くんみたいなイケメンに言ってもらうと自信つくわ!あ、でも私はどうって事ない顔の方が好みだから、安心して」

・・・知ってるよ。

「またご飯食べにきてね!学生さんだからお金ないでしょう?私おっちょこちょいだからまた転んで助けてもらっちゃうかもしれないからね」

・・・知ってるよ。

「じゃぁ、これ。お礼だから気にせずとっておいて!」

手に何かを握らされた。

「いや・・こんなの」

「いいの!私は社会人だから全然いいの!それでおいしい物でも食べなさい。学生は体力が一番よ!」

「・・・ありがとう。じゃ、また・・・遊びに来ます。」

外はもうすっかり暗くなっていた。

ずっとオレは走り続け、気がつくと、公園にいた。
オレはベンチに座り、タバコに火をつける。

駄目だ。

やはり、もう二度と関わっては駄目だ。

あのまま一緒にいたら、オレは自分を抑えきれない。

ずっと2人で生きて行こうと思った。

金もないし、なんにもない平凡な毎日だった。

それでも家に帰れば久美子がいた。

あのときだってそれでいいと思っていたけれど、今は本当にわかる。

それこそがかけがえのない幸せだったんだ。
オレは、アイツがいればそれで良かったんだな。

だからこそ。

オレはもう会ってはいけないんだ。

きっとアイツは告白された彼と一緒になれば幸せになれる。

すげーいい人そうだったじゃないか。

アイツは、その彼を支えて、ささやかながらも幸せな家庭を築いて、子供に囲まれて笑顔で暮らすんだ。

口うるさいところがあるからな。

きっと、子供にうるさがられるんだろうな。

でも、子供はアイツの汚れのない純粋な愛情を感じて、優しい子に育つ。

何があったって、夕飯の時間になるとみんな笑顔で暖かいメシを喰うんだ。

それで。

それでいいじゃないか。

何で。

何でオレは泣いているんだろう。


オレは1人でいいじゃないか。

これからいなくなる人間に、暖かさは必要ないだろ。

オレは世界を救うヒーローなんだぜ。

悪者を倒して、人知れずに世界を救うんだ。

昔憧れてたじゃないか。

ヒーローが寂しくて泣いてるなんて事なかっただろ。

馬鹿野郎。


オレは、ポケットから手を出した。

帰り際に渡されたもの。

握りしめてクシャクシャになった1000円札。


オレの財布には数十万円入ってるっつーんだよ。


でも・・・アイツが一所懸命スーパーで汗流して稼いだこの1000円と、誰からもらってんだかわからねぇオレの財布の大金じゃあ・・・違うんだよ。


こんなの・・・使える訳ねーじゃねーか。


あったけぇな・・・。


オレは・・・。


絶対にみんな幸せにしてみせる。


オレは立ち上がって、歩き出した。


もう、オレは揺るがない。


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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/12/24(土) 08:05:11|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<HERO 20話【長編】 | ホーム | 逆縁の鬼>>

コメント

今回のお話は、泣かせ過ぎです・・・

久美子さんも幸せになってほしいし・・・
仁君も幸せになってほしいし・・・

第六感以外の感情って絶対ありますよね絶対・・・
自分の中ではどうすることも出来ないものって・・・
ありますよね、そこが人間ぽいってことなんですかね~・・・
  1. 2011/12/30(金) 12:08:22 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

いつもいつも感想を書いてくれて、ありがとうございます。
来年はあまりさぼらずに、一気にあと数回くらいで終わる予定です。
どうなるか、楽しみにしていて下さい。
  1. 2011/12/31(土) 09:00:38 |
  2. URL |
  3. 平 #-
  4. [ 編集 ]

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