beat sb hollow

ただひたすらに戯言を

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HERO 20話【長編】

今までのお話し

HERO 1話
HERO 2話
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HERO 6話
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HERO 18話
HERO 19話



HERO 20話

「ふむ。なるほど」

すっかり見慣れた真っ白い壁に真っ白い天井。
研究室でオレは水科と向かい合っていた。

「あくまで、偶然から始まった事だ。居場所がわかったからってどうもしない。オレはもう彼女には会わないよ」

先日の久美子との事を話していた。

「やはり、記憶というものは思うようにはいかないものです。人の思いを完全に操作する事など、できないのかもしれませんね・・・そもそも記憶というものは、その人が生きて来た中での喜怒哀楽、思い、それを消すという事は、その人の人生そのものをリセットしてしまう事になりますからね・・・所詮人間は神ではないと言う事・・・ですかね」

珍しく今日は白衣ではなく、パンツにジャケットという出で立ちの水科が言う。

「白衣以外の格好なんて珍しいな」

それとなく突っ込んでみる。

「あぁ・・・そうですね。研究者なんていうものは格好にはあまり興味がないものですからね。今日は少し外出予定がありますゆえ」

「あのさ・・・前から思ってたんだけど、まだ30代だろ?もうちょっと若者らしくしてみたらどうだい?ありますゆえとか、普通言わないぜ?」

オレは笑いながら言った。

「そうでしたね。本来あなたは私と同年代でしたね・・・。でも、私はこれで良いのですよ」

ガラにもなく、水科は少し照れたような笑みを浮かべている。
そうしていると、同年代っぽく見えるな。

「とりあえず、久美子の記憶を刺激するような事があれば、戻ってしまうかもしれないんだろ?」

「その可能性は・・・あります。非常に高いと言えます。ですが・・・本当に良いのですか?あなたは・・・」

「いいんだよ。たくさん考えたさ。全て終わらせて消える。これが一番のハッピーエンドなんだよ。じゃぁ、オレはそろそろ行くわ」

オレは立ち上がり、上着を羽織った。

「なぁ、全てが終わったらさ。消える前に一回2人で呑みにいかないか?せっかく同年代なんだ。アンタとはゆっくりとくだらない話をしてみたいよもっと」

「いいですね。ぜひ、行きましょう。でも、私の話なんてきっとおもしろくないですよ?」

「話ってのは、おもしろいおもしろくないじゃねーんだよ。どんな話だって、その人の考え方や生き方を感じれるもんだ。そうやって人間ってのは、絆を作っていくんだぜ?」

「絆・・・ですか。ぜひ勉強させてもらいましょう」

笑いながら入り口に歩く。

「だから固い固い全く。一緒に行きたいうまい居酒屋があるんだ。きったいないけどな。楽しみにしておくよ」






****************************************





電話が鳴る。

「もしもし?」

「どうも水科です」

「なんだ。もう用事終わったのかい?」

「途中だったのですが、緊急です。出ました!」

一気に緊迫感が増す。

「どこだ?【GOD】か?」

「いえ。風貌からして【GOD】ではないようですが、普通の人間ではないのは明白です。職務質問した警官の首を素手で刎ねたようです。今は危険ですので、事情をしらない者は全て一定範囲から退避させて封鎖しています」

もう死人が・・・くそ。
毎回の事だが、犠牲が出て初めて気づくしなかいのがもどかしい。

「わかったすぐ行く。場所は?」

キーっと音がして、後ろに車が着いた。

「間もなく迎えが行くはずです。その車で向かって下さい」

「今来たよ。じゃあ、行ってくる。何も心配するな」

車の前にはサングラスをした厳つい男が立っている。

「悪いな。じゃあ頼むわ」

乗り込み、車は発進する。

さて・・・今度はどんなやつがいるのやら。

もうオレは油断しない。
せめて犬死にはごめんだからな。

「着きました。少し離れていますが」

「平気だよ。あまり近づくとあぶないからな」

車を降りて歩いて行く。

少し空気が変わった。

・・・いる。

カフェのオープンテラス席に誰か座っている・・・1人で。

オレはどの男の前に立った。

「お前は誰だ?【C】ってやつか?」

睨みつけるオレの視線に、涼しい顔のまま男は答える。

「そう力を入れずに、まぁ座りたまえよ」

「ふざけるな!答えろ!」

男はため息をつく。

「君は論理的じゃないね。【HERO】よ。まずは状況を把握したいのだろう?説明するから座ったらどうだと僕は言っている。通じたかな?」

・・・いちいちカンにさわる野郎だが、とりあえずオレは話を聞く事にした。

「座ったぞ。じゃあ聞くが、お前は【C】か」

「ご名答」

「何で警官を殺した?」

「君をここに呼ぶ一番簡単な方法だからさ」

く・・・!そんな事で!こいつもまたクソ野郎な様だな。

「何が目的だ!」

「君を殺すこと」

なんだ?こいつは・・・。

今までの奴らとは勝手が違いすぎて・・・なんだかペースが狂う。

「お前の突出している能力ってやつは何だ?・・・まぁ言う訳ねぇか」

「私の能力は、この頭脳です」

自分の頭を指で指しながら、男は言った。

何だ?何なんだこいつは。
そんな簡単に言っていいのか?

「まぁ別に隠すことじゃありませんからね。私は突出した頭脳が武器です。戦闘力なんて全然対した事ないですよ?君ならば簡単に殺せるんじゃないですかね?おそらく」

・・・・!

何なんだ。こいつが読めない。

「何を狙っているんだ・・・!」

「別に正直に答えているだけですよ。それに、すでに私の描いたストーリーは動き出していますから」

「こないだのあの女の襲撃や、ガクを使うのも全部お前が考えたことか」

「あれは完璧だったハズなんですけどねぇ・・・まさか私も誤算でしたよ。君が白鳥仁じゃなかったなんてねぇ。田中純くん」






「お前、何を知っているんだ!」

男はにやりと笑った。

「イレギュラーとはいえね。私のストーリーが狂うなんてプライドが傷つきましてね。今度は完璧に調べ、推測し、組み立てましたよ。完全なストーリーをね。それでは、ゲストに登場して頂きましょうか」

「まさか、またガクを!」

「いえいえ。【白鳥仁】の人質をとってもしょうがないですよ。【田中純】くん。振り向いてご覧なさい」

とてつもなくイヤな予感がする。

振り向いた先には、別の男が女性の首を腕で押さえつけながら立っていた。
その手の先には刃物が握られている。

く・・・

「久美子・・・」

「白鳥くん!これは・・・!?」

一気に頭に血が上る。

「てめぇ!この子は全然オレなんかと関係ないだろうが!」

「クックック。そうでしょうかねぇ・・・純くん?まぁそう頭に血を上らせると冷静な判断を失いますよ?せっかくこの世で一番大切な人が来てくれたというのに・・・フフフ」

そうだ。
冷静になれ。
こいつはきっと全部を知っているんだ・・・とぼけても無駄。

刃物を持った男が強化人間の可能性は既にない。

全力で近づいて一撃で倒せばいけるハズ。
ついてこれる訳がない。

「全力で男に近づき、一撃で倒せばいける・・・と、そういう所でしょうかね」

ニヤニヤしながら【C】は言った。

「確かに・・・正しい判断ですね。あの男が対応するのはまず無理でしょう」

「なんだ・・・なぜ・・・」

「君の思考なんて簡単ですよ。私の思っているままに事は進んでいます。でも果たしてそれでうまく行くでしょうか?それでうまく行くとみせかけて、実はあの子の頭に私がリモコンで爆発できるチップをつけていたら・・・どうします?ククク」

くそ・・・!

はったりだ。

オレと久美子の関係を洗い出してからそんな時間があったわけじゃないだろう。

これは・・・脅しだ・・・でも・・・。

「どうすれば彼女を解放してくれるんだ?」

「素直でよろしいですね。クックック。君を殺すのに、闘う必要なんてない。人間なんて探せば弱みだらけですからねぇ。これを【GOD】に言ったら何故か猛烈に怒ってやめろと言ってきましたがね。彼は自分自身に自信がありすぎるのが玉に傷です」

【C】はオレの目の前まで来る。

「とりあえず、両手両足をもらいますよ」

振りかぶった手を振り下ろす。

「っぐ!!」

完全に折れてるな。

「中途半端では、すぐに君は回復してしまいますからね。コナゴナに砕かせてもらいますね。痛いですか?フフフ」

何度も何度も砕かれ、両手も両足も全く動かなくなったオレは、地面に這いつくばっていた。

涙声で何度も何度もオレを呼ぶ久美子の声が聞こえた。

痛みで意識を失いそうになりながら、必死で【C】を見上げた。

「・・・一思いに殺せばいいんじゃない・・・のか?」

涼しい顔でオレを見下ろしながら、【C】は言った。

「完全体の強化人間はこの世に君と【GOD】しかいないんですよ?その体を痛めつけてみるなんて、これ以上ない興味です。いろいろと見させてもらわないともったいないでしょう?」

足で動かなくなったオレの手を踏みつける。

「ぐぁぁあぁ。痛ぇぇ!」

「本当に痛みは人並みなんですねぇ。ヒーローっぽくないですね。しかし、ここまで砕くと本当になかなか再生しないようですね。ふむふむなるほど」

こいつは・・・狂ってやがる。

快楽とも違う、目的意識がある訳でもない。
単純に知識欲だけでやってるんだ。

今やってる事も、ただの現象としか見ていない・・・コイツの目は人間を見ている目じゃない。

「頼む。彼女だけは・・・帰してやってくれ・・・。オレがいなくなったら彼女がいてもお前には何の意味もないだろう・・・?」

「ふむ・・・そうですね・・・しかし、それは【わからない】と言っておきましょう」

「・・・な!」

「自分が殺されても彼女が助かるかどうかわからないときに、君がどうするのかを見てみたいんでね。それでも助かる方にかけて黙って殺されるのか、どうせこのままなら2人とも殺されると見て私を倒しにくるのか・・・まぁ、それも私には答えがわかっていますがね。ククク」

・・・外道が。

どうする。

どうすればいい。

くそ・・・。

「白鳥くん!」

オレは顔を上げた。

「何がなんだかわからない!でも・・・死んじゃだめ!君は死んじゃダメなの!」

久美子と目が合う。

なんだよ・・・。

泣くんじゃねぇよ。

コイツを・・・こんな優しいヤツを泣かすんじゃねぇよ。

せっかく踏ん切りをつけたのに・・・なんでこんな事になるんだよ。

誰か助けてくれよ。
こういうときに颯爽と現れて悪を倒してくれるヒーローはいねぇのかよ・・・。

久美子の目を見てはっとした。

そうだ。

オレの知ってるコイツはこういう時・・・きっと・・・

だめだ。

やめろ。

オレは立とうとした・・・が、両手も両足も全く動かない。

顔を上げると、久美子が自分から男の持っている刃物に首を押し付けたところだった。

「久美子!やめろーーー!」

首から鮮血がほとばしり、倒れる久美子。

目の前の出来事が信じられなくてオレは呆然としていた。

刃物を持った男は、予想外の出来事にどうしたらよいのかわからないのだろう。
【C】に困惑の目を向けている。

終わった・・・もう・・・。

「ふっふっふ。結局予想通りの結末になりましたねぇ。彼女の性格上、こうなる事は予想していました。どうですか?純くん。君は愛する者を守れませんでしたよ?そして、これから自分も死にます」

ゆっくりとオレの横にしゃがみ、顔を覗き込んでくる【C】。

「殺す・・・お前は殺す・・・」

「ふむ。甘さのかけらもない良い殺気ですね。甘ちゃんの君ですが、今なら確実に僕を殺すでしょうねぇ・・・体さえ動くならね。もちろん、それも予測してありますがね。計算だと最低でもあと1時間ほどは立つ事すらできないでしょうね。君は。このまま怒り、悲しみ、何の希望も見いだせないまま死にます」



倒れている久美子の・・・後ろの茂みで何か動いた・・・?

ガサッ!

茂みから人影が飛び出して来て、久美子を抱きかかえる。

「水科!」

「おっとこれはさすがに予想外でしたねぇ・・水科博士。今更何をしにきたのでしょう?あなたが来たところで何も事態は変わりませんがね」

【C】は涼しい顔で立っている。

水科はしきりに久美子の首筋に手を当てている。

「水科・・・逃げろ・・・アンタまで殺されるぞ・・・」

「仁くん!久美子さんは生きています!大丈夫です!」


なに!!!?


「そんなはずはないでしょう!?確かに頸動脈が切れたハズです!」

ずっと涼しい顔をしていた【C】が怒声をあげた。

「ふふふ・・・。おい【C】よ。涼しい顔が崩れてんぞ。計算ずくじゃねぇのか・・?」

「うるさい!」

【C】は水科と久美子のもとへ歩いて行く。

まずい・・・!

動けこの体ーーー!くそ!

水科は久美子の体を守るように抱きかかえている。

「まったく・・・キサマらは・・・なんでこうストーリーの外に逸れたがるんだ!このくず共が。完璧だったハズだろうが!生きてるはずないんだよ!」

【C】は水科を蹴り上げた。

「ゲフッ」

それでも水科は必死で久美子の上に覆いかぶさる。

「どけよ。きっちりとどめさしてやるんだから」

【C】は容赦なく水科に蹴りを浴びせていく。

「がっ・・・ぐ・・・やらせるか・・・私は裏で研究だけして後は知らないなんてできん!仁くんと・・・私も闘っているんだ!一緒に血を流すんだ!」

「やめろ!水科!死ぬぞー!」

オレは叫んだ。

でも、体が・・動かない。このクソが!何の為の体だ!

「仁くん・・・私は、今やっと・・・一緒に闘っている実感がわきました。アナタはいつもこの痛みとともに闘って来たんですね・・・っぐ!」

「水科・・・でも、オレはもう動かないんだ・・・クソ・・・」

蹴られて血みどろになりながら、水科は笑っていた。

「さぁ・・・仁くん・・・立ち上がるんです。苦しいでしょう痛いでしょう・・・でも、あなたはヒーローなんです。目の前の大切な女性を守れなくてどうします・・・」

でも・・・動かねぇんだよ・・くっそ・・・



ガキィ


とうとう水科が久美子の上から離された。


「しぶとい方ですねぇ・・・。さて、今度は確実にとどめをさして差し上げましょうね。純くん、ちゃんと見ていないとダメですよ?大切な人の最後をね」

クソ・・・冷静さを取り戻しやがったな・・・。

やめろ・・・

やめろ・・・

く!動け動けー!

「仁くん!まだまだ!【HERO】の完全形態はまだまだこんなもんじゃないんです!気持ちを!想いを!久美子さんへの愛はいつわりですか!」

水科が叫ぶ。

想い・・・。

そのとき、久美子がこちらを見てかすかに微笑んだ。

かすれている声で確かに言った。

オレを・・・見ながら。

「純・・・と」


体が熱い。


「なんだ・・・なんで・・・どうなったんだ?」

目を見開いて立つ【C】の前に、オレは立っていた。

「なんで立てる?おかしいだ・・・がっ!」

【C】の顔面を右手で掴み、そのまま持ち上げる。

「おい。どうした?てめぇのストーリーとやらはよ」

そのままおもいきり壁に投げつける。

「ぐぁ!」

水科を抱き起こす。

「大丈夫か!何でこんな無理をしたんだよ。アンタはただの人間なんだぞ?」

血だらけの顔で笑いながら水科は言う。

「グフッ・・・だって、一緒に呑みに行く約束したでしょう・・・?ここで死んじゃったら行けないじゃないですか・・・どんなお店か楽しみに・・・しているのに・・・」

「あぁ・・・そうだな。絶対に行かなきゃな。久美子を守ってくれてありがとう」

「それ・・・より仁くん・・・体は・・・どうですか・・・?」

オレは手を動かして拳を握ってみる。

「それが、不思議だよ。傷は治ってるみたいだ。痛みもない・・・それどころか、力が前よりも数段沸き上がってくる感じっていうか・・・どうしたんだろ」

水科が振るえる手を動かし、オレの肩に置く。

「それが・・・私が思い描いていた【HERO】の完全な姿です。その変色した深緑の瞳・・・間違いない。しょせん机上の研究でしてね。どうすれば完全になれるのか・・・私にもわからなかった。アナタは、きっと自分の力で完成にこぎつけたんです・・・」

「ちょっとだけ待っていてくれな。すぐ終わらせるからな」

水科を静かに寝かせ、久美子のもとへ行く。

「大丈夫・・・?」

少し苦しそうな顔をしているが、しっかりと目は開いている。

「もう大丈夫だからな。すぐに病院に運んでやるから、少しだけ休んでて。3分だけ!3分だけ待ってて!」

久美子は力なく笑った・・・ように見えた。


ガッ!


後ろから飛んで来た足を掴む。

「おいおい。後ろから不意打ちで蹴ろうなんて無粋な真似をするなよ」

そのまま投げ捨てる。

「くそ・・・!何なんだ。まだ進化を残していたっていうのか?【HERO】・・・。そんなことは計算していないぞー!バカげてる!」

もはや冷静さのカケラも失った【C】が立っている。

「もう・・・無理だ。おまえなんぞ一瞬で殺せるぞ」
オレはあえて挑発的に言ってみた。

「おい!おまえ!何をしている!今の隙にさっさと女を人質にとらないか!グズが!」

わめき散らす【C】に驚きながら男は久美子の前に走る。

が、半分も近づかないうちにオレの蹴りに吹き飛ばされてだらしなく転がっていた。

「お前はバカか?こんな普通の人間が今さら何をしてもオレを出し抜ける訳ねーだろうが。こんな事を言い出すとは、本当にもう計算とやらが狂って混乱してやがるな?もうオレに隙はねーぞ?」

「うるさいうるさい!・・・あ!」

と言って【C】はニマァーっと笑った。

「あの女の頭にさー。爆発するチップを付けたって言ったよねぇ?クックック。さぁ、反抗するとスイッチ起動させちゃうよ?」

く・・・クソ野郎が・・・それならば・・・。

「大丈夫です!先ほど簡易センサーで久美子さんをチェックしましたが、何もつけられてないです!だまされないで!」

水科が叫んだ。

ナイスだ水科!

「な・・・なにぃー!何でそんなものを持ち歩いてんだ!」
目を剥いて【C】が叫ぶ。

「・・・科学者だからですよ。ふー・・・仁くん、私はもう駄目です。今の叫びで最後。もう力を使い果たしました・・・少し気絶しますが良いですか?」

オレは笑いながら言った。
「最高の仕事だったよ。科学者。ゆっくり寝といてくれ」

本当は、覚醒後のオレは仮に爆破のチップがあったところで、それを起動させる間もなく瞬時にヤツがちらつかせていたリモコンを奪う自信があった。

でもな・・・そんな事は関係ない。
いい仕事だったぜ。
かっこよかったよ科学者。


【C】はジリジリと後ずさりしている。

「何で・・・何でだ。僕の予想と計算は完璧なハズなんだよ・・・なぜにこうも狂うんだ・・・」

ゆっくりとオレは近づいて行く。

「教えてやろうか。人間の感情も、運命も、計算も予想もできないんだよ。みんな人には計り知れない感情や想いを秘めて生きてるんだ。それが人間ってヤツなんだよ。」

【C】を殴り飛ばす。

「人間の感情まで計算できると思ったのが、お前の唯一の計算間違いだったって事だ」

【C】が起き上がり、走り出そうとした瞬間、オレは言った。

「予想してやろう。お前はあそこに見えるバイクまで走っていって股がり、オレから逃げようとした。残念だったな。オレには見えるんだが、あれ・・・壊れてるぜ?」

驚きの表情でこちらを見る【C】。
「く・・・くそぉぉぉ。お前なんか、僕の頭脳には及ばない・・・及ばないんだ!」

「じゃーな」

思い切り上から地面に叩き付ける。
【C】はそのまま動かなくなった。

オレはさすがに疲れてその場に座り込んでしまった。

水科と久美子のもとに行こうと立ち上がろうとしたその時、【C】が唐突に起き上がった。

コイツ意外とダフだな・・・まだ起き上がるのか。

と、思った瞬間、信じられないような早さで久美子の方へ走って行く。

しまった!

まだこんな早さで動けたのか!

オレは全力で行くべく足に力を込めた・・・間に合う!



!!!



この・・・圧力は!



思った瞬間、目の前には宙に浮いている【C】がいた。
胸から背中に手が突き抜けて血を滴らせている。


「どうしてここに・・・【GOD】」


久々に見る【GOD】は、相変わらず圧倒的な空気を発しながらにこやかな顔でそこに居た。

「やぁ。久しぶりだね。完全に覚醒したね・・・見てたよ」

ズボッと手を抜き、【C】を投げ捨てる。

まずい・・・今このまま闘っても・・・消耗しきっているオレは勝てるのか?

ニコッと笑って【GOD】は近づいて来た。

「今回来た目的は2つ。1つは君の現状を見に来た事。1つは・・・僕、コイツがたまらなくキライだったんだよね。だから、殺しにきた。人質とか姑息な事ばっかり考えつくからね・・・なんかムカムカするんだ」

オレの目の前に立つ。

肌がビリビリする。

やるしか・・・ない!

拳が飛んで来た。

右。

瞬時によけるが少しかすってしまった。
今のオレでも完全によけきれないのか・・・早すぎる!

「うわーこれは本物だね!前会ったときの君だったら完全に死んでたのに!すばらしいよ・・・しかも・・・」

チラッとヤツは自分の脇腹を見る。
少し血が出ている。

「あの一瞬で攻撃までしてきているなんてね。予想以上!」

「よく言うぜ・・・余裕でかわしやがったくせして」

「いやいや。言ってるほど余裕なんかなかったよ!ほんとだってー。あはは」

コイツはまだまだ余裕がある。
クソ・・・。

「じゃ、今日は帰る」


・・・へ?


「何すっとんきょうな声を出してんのさ。目的は2つって言ったじゃない。君との決着は入ってないよ」


歩いて行く【GOD】・・・いや、本当に帰るのか・・・?

と、思いきやヤツはピタッと足を止め、振り向いた。

「決めたよ!君はちゃんと【A】【B】【C】を退けて、完全な【HERO】になった。もう何も言う事はないよ。さぁ、やろう!次に会った時が最後だよ。どっちが勝っても、これで終わる。楽しみにしているよ・・・近々僕から会いに行くよ」

オレは、どうしても離れない考えをぶつけてみたくなった。

「なぁ!おまえ本当は闘う気とかもうないんじゃないのか!?やめる事はできないのか?」

「・・・辞めることはできないよ。僕は人を殺すのが楽しみなんだぜ?何言ってるんだい今更。君は僕と闘うしかないんだよ。まぁ数日は会いにいかないからせいぜい人生の最後を整理していろいと片付けときなよ・・・そこの最愛の彼女とかね。あはは」

そのまま右手をひらひらと振りながら【GOD】は去って行った・・・。

この間会ったときも思った事だ。

絶対に・・・アイツ・・初めに会ったときとは・・・何か違う。



・・・いや、今はそれどころじゃなかった。


こうしてられないんだった。

無線を入れてすぐ来てくれるよう伝える。

オレは久美子をそっと抱きかかえた。

「・・・大・・・丈夫・?」

久美子は一生懸命に目を開けながら口を開いた。

「オレは全然大丈夫だよ・・・それよりあんな無茶な真似して・・・死んだかと思ったんだから」

「こ・・・れ・・・・」

見ると、首にネックレスがついている。

「これが・・・守ってくれた・・・みたい」

まさかこんな細いチェーンが運良く刃に当たったっていうのか・・・。

ん!これは!

「このネックレス・・・!」
思わず声に出してしまっていた。

「そう・・よ・・・純が誕生日に買ってくれたもの・・・だよ」



記憶が・・・戻っているのか?
でも・・・オレの姿は・・・。

「よく・・・わからない・・・目も・・・今よく見えないけど・・・純がいる・・・わかるの」

オレは何と返したらよいのかわからずにただ黙って聞いている。

「なんで忘れて・・・いたんだろう・・・こんなに大切な事を」

泣きながら優しくオレの頬をなでる久美子の手が暖かくて、オレも泣いてしまっていた。
これでは・・・認めているようなものじゃないか。
駄目だ・・・おさまれ・・・。

「首を切って倒れたときに・・・一瞬で頭に全ての事が・・・フラッシュバックしてきたの。それから目がかすんできて・・・よく見えなくなったけど、純が久美子と呼んでいるの・・わかったよ・・・あぁ、来てくれたんだって・・・昔から・・・純は私が困ったときに必ず来てくれるの・・・私のヒーロー・・なんだよ?」

「うん・・・うん・・・」

「あとね・・・相変わらず・・・3分待ってって口癖ね。朝起こす時にいつも言ってた・・・よね・・・」

オレは泣き笑いの表情でぐちゃぐちゃになっていただろう。

もう耐えきれずに号泣していた。

今は・・・今だけは・・・いいよな?今だけだ・・・。

今この時は・・・オレ、一人じゃないんだ・・・。


「純」


「・・・ん?なに?」


血まみれの顔で久美子は穏やかに、全ての事を包み込むように優しく笑った。


「おかえり」

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/12/24(土) 15:23:48|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<水は方円の器に従う | ホーム | HERO 19話【長編】>>

コメント

ん・・・いいね・・・いいね・・・涙・・・

痛かったし、苦しかったけど、水科さんとも、真の友達になれたし、久美子さんが死んでしまわなくて・・・本当に良かった・・・。

信じ続けること、愛する気持ちってやっぱりすごいんだなって思いましたよ。

次回も楽しみに待ってます。
  1. 2012/01/01(日) 04:01:58 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

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