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ただひたすらに戯言を

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HERO 22話【長編】

今までのお話し

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HERO 22話

-真由美-

深夜の公園は空気が冷たい。

でも、今日は星がとてもきれいに輝いている。
東京にいて、中々こんなにきれいな星空は見れないかもしれない。

「新潟って、やっぱりもっと星がよく見えるの?」

隣に座って空を見上げている彼に聞いてみる。

「そうだなー。住んでた頃は意識なんかした事なかったけど、東京にいるとそう思うな」

明日はいよいよ最後だっていうのに、この人は全くいつもと変わらないのんきな空気を出している。

「ねぇ、なんでそんなに落ち着いているの?だって明日は・・・」

「どうしてかなーオレにもわかんねぇな。でも、散々今まで葛藤してきたからな。後はもうなるようにしかならねぇしなー。それに・・・勝っても負けても、明日で終わりだ。そう思ったら不思議と落ち着いてきてな」

そう言いながら、彼はタバコに火を付ける。

「タバコ・・・結局辞めてくれなかったね」
私はわざと少し恨むような目つきでじっと見つめる。

彼は、天に向かってタバコの煙を吐き出す。

「何でか知らねーけどさ・・・ほら。空気が冷たい夜って、タバコの煙がやけにキレイに見えるんだよな。なんでだろーなー」

私は思わず笑ってしまう。
「知らないよそんな事ー。でも、ほんとね。キレイ」

「タバコなんかさ、人からは嫌われるし、健康は害するし、いい事なんかねーんだよな。それでも、オレは今までの人生つねにタバコを持ってたんだ。どの思い出を思い出しても、オレはタバコを持ってる。関係ない人からしてみたら知ったこっちゃねーって感じなんだけど、オレにはやっぱり色々と思い出があるんだよな」

「うん・・・タバコは嫌いだけど、なんかわかるよ」

手が冷たくて、両手を摺り合わせていた私の上に、彼がコートをかける。

「いいよ。あなたが凍えちゃうから」

返そうとしたその手を制される。

「全然。オレは暑がりだからさ。むしろ暑くてね。自分で持つの面倒くさいから持っておいて」

かすかに震えてるじゃない。

この人は、本当に馬鹿だ。

いつも強がって人を助けようとするけれど、すぐにわかる。

優しい馬鹿。

「ねぇ、本当にあなたは・・・仁を助けてそれでいいの?だって、だって・・・」

涙が頬を伝う私の頭の上に、彼は優しく手を乗せる。

「仁はきっと余計な事をすんじゃねぇって言うだろうな。アイツの存在は常に頭の中で感じてるんだ。一回出て来てから、それはさらに強くなった。アイツ、いるんだよ。ここに」

そう言って自分の頭を指差した。

「あなたが消えるのなんてやだ!私にも、もうあなたとの思い出があふれてくるの。ラーメン屋に連れてってくれ事、一緒にテレビを観ながら笑ったこと、あなたは、ただのお嬢様だった私にいろんな事を教えてくれた。人間として大事な、大事なこと!仁には帰って来て欲しい・・・でも、あなたが居なくなるなんて!」

私は彼の胸に顔を埋めて泣きじゃくっていた。

彼は何も言わずに、ずっと私の頭を優しく撫でていた。

ずっとずっと、そうしていた。

「大丈夫さ。キミは、自分の本当に大切な人が誰なのかちゃんと気が付いた。オレだって、確実にいなくなるわけじゃねーんだ。頑張って帰ってくるさ。そしたら今度は仁も一緒にあのきったねぇラーメン屋に連れてってやるよ」

「本当?本当に仁もあなたも帰ってくるのね?」

「あぁ、頑張るさ。だから泣くな。明日なんて、すぐに終わるさ。昨日も今日も明日も、一瞬なんだぜ。毎日が意味があるのかって言えば、ないしな。でもそうやって意味もなく、理由もない1日の積み重ねが人生だからな。最後死ぬ間際に笑っていられるかどうか。それが人生の意義ってヤツなんじゃねーかな」

私は、涙をぬぐいながら笑う。

「なんか、見た目と言う事が合ってないわね」

「ははは。まぁ、中身はおっさんだからな。本当ならば残尿のキレを心配してなきゃいけないところだ」

「汚いよー」

彼は立ち上がり、私の頭に手を軽く置いた。

「やっと笑ったな。いいか、笑え。笑ってさえいれば、物事ってのは全部いい方に転がるんだよ」

私も立ち上がり、彼の腕に自分の腕を絡ませる。

「今日はこうやって帰る。仁が帰って来たら、もうできなくなっちゃうからね」

2人、肩を寄せ合いながら歩き出す。

いろんな事があったなぁ。

急に自分は仁じゃないとか言い出すし、特殊な力があるとか言い出すし、漫画みたいに悪と闘い始めちゃうし、言う事は雑だし、女性の扱いは雑だし、ごはんは汚い所にばかり食べに行くし、本当に振り回されっぱなしだった。

この人は、私の小さな殻をいとも簡単に破ってくれた。

人間のにおいを、生き方を、優しさを教えてくれた。

あなたは帰ってくるって言ったけど、それもウソ。

でも、私はあきらめない。

こんなにお世話になったあなたを、簡単に消えさせたりなんかしない。

きっと仁もそう思っている。

あなたは、わたしが守る。




****************************************



-???-

人気のない河原の川辺に一人の男の姿がある。
男は、ポケットに手を入れたままずっと空を見上げている。

男は、今までの人生を頭の中で回想していた。

4歳の時に、母親に刺された。
新しい男とくっつくのに邪魔だったから、らしい。

幸いにも一命を取り留めたが、母親が刑務所に入ったおかげで、施設での生活が始まった。

表向きは仲が良い子供たちの中で、常に陰湿にイジメられた。

大人に訴えても、信じてもらえないどころか、こんなにみんながいい子なのに何故この子はこんな事ばかりを言うのだろうと、煙たがられた。

そんな中で、1人だけいつも優しく話しを聞いてくれる大人が居た。

その人だけを心から信頼し、心から頼った。

12歳のある日、その人に知らない男の前に連れて行かれた。

目の前の男は、下品な顔で服を脱がせて来ようとした。

怖くなって助けを求めた。必死に。

いつも優しかったはずの大人は「少しくらい役に立てよ。世話やいてやってんだから」と言い残して消えた。

翌日、いつもと変わらず優しい笑みを浮かべていた大人を、刺した。

そのまま施設を飛び出した。

それからは、生きて行く為に何でもした。

初めて女を好きになった。

一緒にいると、とても暖かかった。

その女に、自分が幸せにするから全ての悪事から手を洗ってと言われ、全ての黒い関わりを切った。

当然すんなり行くわけはなく、家に脅しに来られた。

そのときに彼女が言った言葉は「私は関係ないです。早くこの人を連れてどこかに言って下さい」だった。

そのときから、何も感じなくなった。

怒る事もない。

嬉しいと思う事もない。

ただ、日々生きるのみ。

ひたすら虚無。

あぁそうか。死ねばいいんだ、とある日気づいた。

鈴木とかいうおっさんに声をかけられたのはそんな日だった。

なんか面倒くさい説明をされたけど、要するに特別な人間にならないかと言われた。

とりあえず、自分を必要とする人間が久しぶりすぎて新鮮だったから、ついて行った。

どうせ裏切るんだろうけど、まぁ別にいいや。

変わった肉体は、すごい力を秘めていた。

久しぶりに、心が高揚した。

殺しまくった。

みんな、みっともなく命乞いをしてきた。
自分が助かりたければ代わりの命差し出せと言えば、みな躊躇無く差し出して来た。

愉快だった。

あの時までは・・・。

そう、あの母親は、子供を助ける為に自分の身を差し出して来た。
あの男は、見知らぬ母子を助ける為に、叶うはずもないのはわかっていながら向かって来た。

【HERO】

あいつが現れてから、なんかおかしくなった。

いつも血まみれになって傷つきながら、他人の為に怒り、向かって行く。

初めは嘘だろうと思っていたんだ。
人間は全員裏切るから。

あいつは、痛みなんていう余計なものを残されているから、いつも苦痛にもだえながら闘っていた。
無様に。

無様なはずなんだよな。

でも、何故か、心が熱くなるんだ。

一生懸命、無様に足掻いてるだけなのに。

あいつと闘ってみても、圧倒的にこっちの方が強かった。
簡単に殺せた。

でも、何故か、もう少し見てみたかった。

あいつといる時、今まで忘れていた何かを感じる。

もうずっと忘れていた気持ち。

感情ってこんな感じなんだっけか。

きっとあいつと闘えば、何かがわかる気がする。

もう、善とか悪とかどうでもいいんだ。

鈴木の願いが叶うなら、それでもいい。

潰えてもいい。

オレには、どうでもいい。

あいつは、オレに何を見せてくれる?

どんなに痛い目にあっても、また向かってくるんだろうか。

痛みって・・・なんだっけ。

もう思い出せない。

そう、これは興味って奴だ。

それだけだ。

なんか、胸の中が冷たい、と男は思ったが、それが何なのかはわからなかった。

男は、ずっと空を見上げていた。

今日は星がとてもきれいに輝いていた。

昔、誰かと同じような星空を見上げていた事を思い出した。

男は、ずっと空を見上げていた。

大事そうに、1枚の写真を持ちながら。


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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/02/02(木) 13:11:25|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

う~ここまで? 続きが・・・読みたい・・・

いろんな人生が、絡み合って、もしかしたら最悪の終わりにはならないかもって思えてきました。

楽しみにしています。
  1. 2012/02/06(月) 09:54:56 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

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