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HERO 23話【長編】

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HERO 23話

深夜の河川敷。

「とうとう来たね」
と、目の前の男が言う。

ほどよく短めな黒髪と、控えめなシャツ。
相変わらず見た目だけは、よくいる真面目な若者と言う感じだ。

「オレは水科から【GOD】ってヤツは、以前の記憶を失っているただの殺戮マシーンって聞いていたんだけれど、おまえ本当は記憶・・・あるんだろ?」

オレは真っすぐにその男、【GOD】の目を見据えながら言った。

確信はない。
でも、何故かこの前コイツを見たときにオレは、ひょっとしたら戦闘を回避できるんじゃないか、コイツは人間の良心を持っているんじゃないかって、直感で思ったんだ。

【GOD】は少年のような満面の笑みで答える。

「確かに・・・オレは全部覚えてる。鈴木博士は完全にオレの記憶は消失していると思っているみたいだけどね。何故か無くならなかった。」

「じゃあ、鈴木なんかの言いなりにならなくてもいいじゃないか?お前にはお前の人生があるだろう!お前は本当は悪い奴じゃないと思う」

そう言い終わった瞬間にオレは戦慄した。
体中の毛穴という毛穴が開くような、全身を襲う悪寒。

目の前から発せられる圧倒的な殺気。

「悪い奴じゃない?笑わせるね。ただ殺したいから殺す、やりたい事をやる、僕にとっては、それに悪いも良いもないんだよ。これは鈴木なんぞにちゃちな洗脳をされたからじゃないよ。僕自身の意思だよ・・・ふふふ。くだらない事いってんなよ、これだけを楽しみにしてたんだ」

爽やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてくる【GOD】。

「さあ、やろう。僕を止めてみろよ。【HERO】」

気づけばオレは、全身が冷や汗でびっしょりと濡れていた。
今まで感じた事のない恐怖が全身を支配する。

怖い。

情けないが、今オレは心底怖いと思っている。

オレの気のせいだったのか、コイツは心底から悪なのか。

どっちにしろ、闘いはさけられないと覚悟を決めた。
いろんな人の顔が頭の中を駆け巡る。
オレは、勝ち、そして生きて帰らなければならない。

そうだ。

生きて、この【身体】を届けなければ。
約束したんだよ。
いろんな奴に。

「うぁぁぁぁ」

全身の力を解放し、前を向く。
もう、恐怖はない。

「ふふふ。そうでなくちゃダメだよ。僕に痛みを、恐怖を、生きる意味を、教えてみろ!」

【GOD】は楽しそうに、本当に楽しそうな笑顔でこちらに一直線に駆けて来た。




****************************************



研究所。
薄暗い1室。

「くそ!ダメだ!やはりこれではうまくいかない・・・」

机を激しく叩き、うなだれる水科。

そこに電話がなる。

「はい・・・え!いや、それは・・・でも・・・。わかりました。ロックは解除しておきます」

しばらくして入り口の扉が開き、1人の女性が姿を現す。
長くてしなやかな黒髪、整ったその顔には、強さと悲しみが溢れていた。

「どうしました?・・・真由美さん」
水科は振り返りながら言った。

真由美は何も言わずに奥へ進み、そこにある巨大なカプセルを見た。

「この中で液体に浸かっているのは、田中純の肉体・・・ね?そうなんでしょう?」

ゆっくりと水科が近寄ってくる。
「そう・・・です。実は脳のほんの1部を移植しただけで、体はそのまま保存してありました」

「でもこの・・・体は・・・。」

「はい。全身が激しく損傷しています。仮に脳が生きていたとしても、まず助かりません。」

真由美は振り返り、水科の顔を真っすぐに見た。
「それでも、何とかしようとした・・・違う?教えて・・・全部。お願いします」

「あくまで・・・あくまで小さな可能性でした。ほぼ不可能とあきらめていました。でも、純くんの姿を見ているうちに、たとえ結果がどうであれ、やりもせずにあきらめるのは違うと思ったんです。白鳥仁の体を支配しているのは、ほんの少しだけ移植した田中純の脳のかけらだと思われます。事故を起こした当初はそれしか生存させる術はなかったのですが、今の白鳥仁の肉体には【HERO】細胞がいます。田中純の細胞を取り除いたとしたら、おそらく白鳥仁の人格が戻る・・・と予想します。脳の欠損も【HERO】細胞が自動修復するでしょうから」

「純くんの細胞はどうなるの?」

「当初の純くんと示し合わせた予定では、ここまでです。私は、摘出した脳細胞を元に戻しても純くんは生き返らないと言いました。こちらの体には【HERO】細胞はないのです・・・ただの人間なんです」

「純くんは・・・やっぱり自分は消えるつもりだったのね・・・。でも、道があるんでしょ?ねぇ!」

「私はこの数日間、彼には秘密裏に、ある1つの可能性にかけて研究を続けていました。それは、仁くんの【HERO】細胞を、半分純くんに分け与えたら、時間はかかっても2人とも再生可能ではなかろうか・・・と」

「それで・・・どうだったの?」

「長い計算の末に、先ほど結果がでました。結論は、NOです。仁くんにしても、純くんにしても、半分の細胞では復活できません」

水科はここまで話すと、大粒の涙を流して俯いた。

真由美は立ち上がり、純の体が浮かんでいるカプセルを愛おしそうにさすりながら言った。

「博士・・・、私の体を使って純くんの欠損部分を治せない?」

「・・・!バカな!あなたは生きているのですよ!純くんの体を修復するなんていったら、手も足も臓器も無くなって・・・つまりあなたが変わりに死んでしまいますよ」

振り返った真由美も泣いていた。
水科の目を、真っすぐに見つめる。

「あなたは、それを考えていたんですね・・・迷いのかけらもない顔です。でもそれでうまくいったとして、あなたが仁くんにも、純くんにも会えなくなってしまうのですよ」

「いいの。ずっと考えてた。仁も、純くんもいなくなるのはいや。それは私のわがまま。その、わがままを通すにはどうすればいいかって。だから、いいの」

真由美は、涙を流しながらにこりと微笑んだ。

水科は天をあおいで大きく息を吐き、椅子に座り直した。

「あなたには負けました。でも、いくら体を先に完全に修復したとしても、少しの【HERO】細胞で生き返る確率は限りなく低い。無駄死にしてしまう可能性も高いのですよ」

「何もしないよりもよっぽどいいじゃない。このまま何もしなかったら、どうせ生きていても後悔しながら俯いて生きていく事しかできない。そんな人生じゃだめだって、純くんを見ていて思ったわ。できる事を全力でやる。それでダメだったら、悔いはない」

「わかりました・・・。私の科学者生命にかけて、あなたも、仁くんも、純くんも助けてみせます。では、とりあえず純くんが闘いを終えて帰ったらすぐに取りかかれるよう、準備をしておきましょう。あなたは全てが終わるまで、麻酔で眠ることになります。いいですね?」

「いいわ。博士、必ず仁と純くんを会わせてあげてね」

2人は笑顔で見つめ合い、握手をした。

そして真由美は寝台に横たわり、しばらくすると麻酔が効いてきたのか眠りについた。

水科が見つめるその顔は、何かを確信したかのように安らかだった。

「ふう・・・。そんなに信頼されては、絶対に失敗はできませんね・・・」


水科は椅子に座り、背もたれに体重をかけて息を吐き出す。

「なんて、聡明な人だろう。私でさえ思いつかなかった。確かに欠損を完全に修復して後ならば、確率はあがるだろう・・・それでも・・・絶望的なのには変わりないがね。」


「できる事を全力でやる・・・か。全くだ。」


水科は立ち上がり、奥へと歩き出す。


「ただし、使うのは私の体ですがね。目が覚めたらきっと怒られるのでしょうね。真由美さん、あなたはいなくなってはダメですよ」


水科の顔には、もう迷いは無かった。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/03/05(月) 15:17:22|
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