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ただひたすらに戯言を

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HERO 最終話【長編】

今までのお話し

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HERO 24話


HERO 最終話

目の前に広がる冬の日本海は、波を高く掲げている。
陽の光で黄金色に輝いた水面を見つめたまま、いったいどれ程の時間が経ったのだろう。

「純・・・あの日アナタが私に見せてくれるハズだった風景を、今見ているよ」

久美子は微笑みながらずっとそこに佇んでいた。

あれから毎日、この約束の場所で海を眺めながら過ごしたが、純は帰ってこない。
あの事故の直前に交わした約束は、あれっきり時間を止めたままだ。

「それでも・・・私は・・・」

「久美子さん」

後ろから不意に声をかけられて振り返ると、そこには水科が立っていた。

「水科さん・・・何故ここに?」

水科は優しい笑みを浮かべながらゆっくりとこちらへ歩いてくる。

「いえね。仁・・・いえ、もうアナタには隠しても無駄ですね。純くんから私は一つ、頼まれごとをされていましてね」

水科は小さな箱を出し、久美子に手渡した。
それを開けてみると、中には質素な指輪があった。

「これ・・・は・・・?」

「あの日、純くんがこの世界から消えてしまった日。彼がアナタに渡すハズだったものです」

久美子の目から涙が溢れ出す。

「そん・・・な・・・!」

「そうです。あの日彼は、アナタにこう言ったハズです。『一緒に故郷の新潟に行かないか?見せたい景色があるんだ』と」

水科は続ける。

「その時に彼はアナタにプロポースをし、ご両親の墓前に二人で挨拶に行くつもりだったのですよ。ですがあの事故により、それは果たされなかった」

「何故・・・アナタが、それを知っているの?」

「本人から直接聞いたからです。何となくアナタもおわかりになっているハズ。細かい説明は致しません。ただ、あの事故のあとも、【この世界から消えてしまった純くんは】アナタをずっと見守っていた」

「そう・・・やっぱり、仁くん・・・。純・・・!純!」

水科は久美子の肩に優しく手を置く。

「きっとアナタの時間も、あの事故から止まってしまっていたのでしょう。でも、もうそろそろ動き出さなければ」



水科は最後の瞬間を思い返していた。

瀕死の仁と純。

我が身を犠牲にしようと決意した可能性も無惨に砕け散る。
1人分の【HERO】細胞では二人の蘇生は叶わなかった。

いよいよもう、どちらか1人を選び蘇生するしかなくなった時、せめてもの償いとして、自分も一緒に死のうと思った。

その時ドアが開き、1人の少年が入ってきた。
少年は血に染まっていた。

少年は言った。

「僕の細胞を使ってよ」

決断を迷った水科の前で、少年は自分の心臓を突いた。

「ほらね。もうこれで僕死ぬから。じゃあ後よろしくね」

崩れ落ちる少年に水科は聞いた。
疑問しかなかったからだ。

何故?

「だって、友達を助けるのって当たり前なんでしょ?」

そう言って少年は力なく横たわった。
まるでたった今、とても嬉しいことがあったかのような暖かい顔で。

そこからはもう水科にとって迷う暇はなく、よく覚えてもいない。

ただ、それでもなお、仁と純の損傷はあまりにも激しすぎたのだ。



「・・・水科さん?」

声を掛けられ、水科は我に返る。

「ありがとう・・・水科さん。そうね。私・・・そろそろ歩きだすわ。前に向かって」

水科はニコリと笑い、言った。


「それは、あの人に言ってあげて下さい」

「・・・え?」


水科は久美子の背後に向かって声を上げた。

「やはりずいぶん時間がかかりましたが、どうやら間に合ったみたいですね。それなら私が来る必要はなかったな」


久美子は後ろを振り返った。

沈み掛けてきた陽の光が目に入る。

時計の針が動き出した。




****************************************




「そろそろじゃないの?」

「そうだな。随分と待たせやがってあの野郎」

金髪を短く刈り込んだ体格のいい男と、しなやかな黒髪をきれいに結い上げている女。

「もう。私たちの式の時もアナタは文句ばっかりだったし!今日は祝う側なんだからそんな事言っちゃダメよ」

「そんな事気にしねーだろ。アイツは。これでも心から祝福してんだぜ?恩人さまにはよ」

金髪の男は豪快に笑いながら、グラスビールを一気に飲み干す。

「大体おまえはこらえ性がないよ。もう登場するからちゃんと待ってなよ」
と、横から背丈の小さい眼鏡の男が言う。


大きな音を立ててドアが開く。

音楽が流れ、純白のドレスに身を包んだ女と、黒髪をオールバックにした男が厳かに歩き出す。

自分の目の前に来たとき、金髪の男がヤジを飛ばす。

「おー立派なもんじゃねーか!おっさん!」

「誰がおっさんだ!この若造が!」

男2人は目を合わせ、拳を拳を軽くあわせて微笑んだ。



その様子を、入り口の外から見つめている少年がいた。

係の人間が、気づいて声を掛ける。

「お客様?よろしければどうぞ中にお入りになって下さい」

少年は、「いや。たまたま通りがかった他人だよ。お幸せにとでも言っておいて。じゃあ」

と言うと、手を軽く上げて左右に振りながら、そのまま、会場から遠ざかる。

歩いていると、目の前にいきなり人影が現れた。

少年が顔を上げると、女が1人、手に1枚の写真を握りしめ、立っていた。

目に涙を浮かべた女は、少年の顔を見ながら微笑んだ。

少年も、目から涙を流しながら微笑んだ。



会場の方では、入場が終わり、2人が列席者の前に立った。

永遠の誓い。

男は高らかに宣言した。

「あーもう!形式ばった言葉はめんどくせぇ。誓うから。これからオレはお前をずっと愛する。つらいときも悲しいときも嬉しいときも、腹が立つ時も、うまいものが喰いたい時も、酒が飲みたいときも、仕事がうまくいかないときも、幸せな時も」


そして・・・


「例え1回死んでもな」


そのまま2人の影は重なる。


いつまでも、拍手は鳴り響いた。




END









****************************************



ドアを開けて慌ただしく駆け込んでくる水科。

「出ました!E街の5番地です。現在負傷者2名確認しています!」

部屋にいた金髪の男と黒髪の男が、立ち上がる。

「またかよー。ゆっくりゲームもできねぇなー」
金髪の男が渋々と着替えを始める。

「まーそう言うなよ。サクッと片付けてビールでも引っかけようぜ」
黒髪の男が金髪男の肩をたたく。

「またあのきったねー店だろ?油くせーんだよ。行こうぜって言っても、どーせ金オレが払うんだしよ」

「細けー事言ってんじゃねーよ財閥の御曹司がよ。ほら、行くぞ」



2人は通路を走り出した。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/04/08(日) 02:03:06|
  2. HERO【長編】
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<東京、クソお世話になり申した | ホーム | 越鳥南枝に巣くい胡馬北風に嘶く>>

コメント

終了です

思いつきで適当に始めた程度のものですが、やっと終わりました。
コンセプトは中二病全開でライトノベルや携帯小説っぽい文体で書くことっだったのですが、思いの外難しくて、途中で飽きてやめようとしました。
それでも少数ながら最後まで書けと急かしてくれる人がいたので、なんとか完結しました。
ちゃんと書けばもっと文体も話の細部も何とかなったのでしょうが、無理矢理はしょって終わらせた感満載です。
推敲なども一切していないので、前後のつながりも破綻していると思いますし、文章もまぁひどいもんです。
小説家でもモノ書きでも何でもないので、その辺は多めにみて下さいませ。
「小説家気取りで何かやってるな」くらいに思われているでしょうから、まぁ大丈夫か。
とりあえずいつも読んでくれていた方、感想をいつもくれた方、催促してくれた方、稚拙なもんに最後まで付き合って下さり、ありがとうございました。
もう、こんなものは書きませんw
書くとしたら1話完結とかの空想話とかにします。
サラッと。
  1. 2012/04/08(日) 02:15:18 |
  2. URL |
  3. 平 #-
  4. [ 編集 ]

お疲れ様でした☆

良かった・・・ハッピーエンドだってことですよね。

辛い時期を乗り越えて、それぞれの人生が良い方向に向かったんだなって思ったら素直に嬉しくなりました。
色んなことはあるけれど、その時その時を懸命に生きていたら幸せは必ずやってくるんだなって想えましたよ。
長い間・・・お疲れ様でした、そしてありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。笑
  1. 2012/04/09(月) 01:54:56 |
  2. URL |
  3. 一恵 #-
  4. [ 編集 ]

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